| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-381  (Poster presentation)

mtDNAとゲノムワイドなSNPの解析からみたアジメドジョウの遺伝的集団構造【A】
Genetic structure of Niwaella delicata based on mtDNA and genome-wide SNP analyses【A】

*滝澤俊貴(三重大学), 山本義彦(おおさか環農水研), 河村功一(三重大学)
*Toshitaka TAKIZAWA(Mie Univ.), Yoshihiko YAMAMOTO(RIEAFO), Koichi KAWAMURA(Mie Univ.)

 野生種の詳細な遺伝的集団構造を把握することは種の成立過程の解明の上で重要であるとともに、保全施策の立案においても必須である。河川上中流域に生息する純淡水魚は分散能力が低いため、遺伝的集団構造が地史的イベントの影響を受けやすい特徴があり、系統地理学的研究に適している。中部・近畿地方は日本列島において地殻変動が活発な地域であり、歴史的に山地形成や河川争奪といった地形的変化が激しいことが知られている。こうした背景を基に、本研究では当地方の河川上中流域に生息するアジメドジョウ(Niwaella delicata)を対象に分子系統解析を行い、遺伝的集団構造の成立プロセスを明らかにすることを目的とした。本種の分布域を網羅した39地点において採集を行い、計221個体を分析に用いた。mtDNAにおいてはND5-6領域の部分配列を解読し、核DNAにおいてはMIG-seq法によりゲノムワイドSNPデータを取得し、系統解析ならびに集団解析を行った。mtDNAの分子系統樹において地理的分布と対応した3クレード(九頭竜、富山、太平洋)が確認できたものの、富山クレードの分布域内の2地点(高山、南砺)では太平洋クレードのハプロタイプが確認された。SNPを用いたアサインメントテストにおいては3クラスターの存在が示唆され、クラスターⅠは九頭竜・富山、クラスターⅡは岐阜・宮川(三重)・敦賀、クラスターⅢは琵琶湖・淀川の集団から構成されたものの、上記の高山と南砺の2地点においてはクラスターⅠとⅡの遺伝的混合が認められた。九頭竜と富山の集団はmtDNAでは顕著な遺伝的分化が見られたのに対し、アサインメントテストでは同一クラスターに属し、主成分分析では僅かな差異が認められた。これらの結果は、1)岐阜集団の分水嶺を越えた富山平野への進入、2)両白山地形成にともなう九頭竜と富山の集団の隔離・融合・再隔離といった複雑な分布形成の歴史を反映したものと考えられる。


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