| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-382 (Poster presentation)
ツキノワグマ(以下クマ)は人為的攪乱に対して高い行動可塑性を示す大型哺乳類で、里地周辺では夜行性へのシフトや農地利用等、人為環境に適応した行動がみられる。しかし、里地周辺の道路横断地点での環境選択性や、また個体の農地利用の有無や昼夜の違いについては、定量的な検討がほとんどない。そこで本研究ではGPSテレメトリーデータと現地環境調査を組み合わせ、人里周辺を利用するクマの道路横断地点の空間的特性を解明することを目的とした。
調査地は長野県中央アルプス東麓の里地里山である。解析個体は発表者らが2010〜2023年にGPS首輪を装着した14頭で、道路横断地点としては複数個体の横断が確認された30地点、比較対象として横断可能地点60地点が設定された。各地点で道路沿いの植生項目、見通し距離が測定された。またGISを用いて横断地点周辺の土地利用区分等を算出した。さらにGPS測位点に基づき移動経路での土地利用割合を算出した。データは既報(大津ほか2025)と一部重複する。
結果、横断地点は横断可能地点と比較して、最大草丈が有意に高く、見通し距離は有意に短かった(p<0.01)。前者の優占植物はツル植物や高茎草本が多く、草地が主体の後者とは異なり、クマは道路横断時に隠蔽性の高い植生構造を選択した。
農地利用個体は非利用個体よりも草丈が高く、見通しの悪い環境での横断が多く、夜間の横断地点でも同様で、前者ほど、リスク回避として物理的な隠蔽条件を選択すると考えられた。
主要な移動経路には河川沿いのアカマツ林やクリ・コナラ群落が使われ、これに加え農地利用個体では水田や畑の利用割合が高かった。横断地点の立地特性としては河川およびトウモロコシ畑から比較的近く、住宅地からは一定の距離を保った地点が選択された。農地利用個体ではトウモロコシ畑近傍での横断が多い一方、非利用では河川近傍の横断の頻度が高かった。