| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-383 (Poster presentation)
日本の多くの森林において、ニホンジカの増加に伴う下層植生の衰退や森林生態系全体への影響が報告されている。屋久島の西部低地林においても、シカが高密度に生息する地域では嗜好性が高い樹種の稚樹が減少し、嗜好性の低い樹種が増加することが知られている。
本研究は、島内でもシカの密度が相対的に低く、下層植生の残る場所で、シカの密度と下層植生の関係を明らかにすることを目的とした。同地で過去に行われたシカ密度・植生調査(半谷ら 2010)の追跡調査を行い、シカ密度と下層植生の関係の経年的な変化を調べた。
屋久島西部の標高800-1300mに位置する瀬切川・大川上流域において、30個の調査区(50m×4m)を設置し、2012年から2024年にかけて継続的に、区画内のシカ糞塊数を記録した。また、2012年と2024年に植生調査を実施し、区画内の高さ1.5m以下の植生の被度と種名を記録した。
解析では、10m単位の被度合計等を応答変数、標高とシカ密度指標(シカ糞塊数)を固定要因、調査区をランダム要因とする一般化線形混合モデルを用いた。同地域での食性解析の結果に基づき植物の嗜好性別に着目して解析を行った結果、2012年、2024年のいずれにおいてもシカ密度と嗜好性植物の被度には明確な関係が見られなかった。一方、2024年の不嗜好性植物の被度は調査区ないで相対的にシカ密度が高い場所において、有意に高かった。また、密度の移動平均を考慮したモデル解析の結果から、全体としてシカ密度が低い地域であっても、局所的に密度が高い状態が継続することで、不嗜好性植物が増加することが示唆された。