| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-385  (Poster presentation)

貝殻への不満度はユビナガホンヤドカリの闘争行動に影響を与えるのか?【A】
Does shell inadequacy influence shell fights of the hermit crab Pagurus minutus?【A】

*篠原凜, 北西滋(大分大学)
*Rin SHINOHARA, Shigeru KITANISHI(Oita Univ.)

ヤドカリ類は巻貝類の殻を生活に必須の資源として利用している.一方で,野外でヤドカリが利用可能な貝殻は不足しており,限られた貝殻をめぐる闘争が生じている.ヤドカリ類の闘争に影響を与える要因の一つとして,ヤドカリが利用している貝殻のフィッティングが考えられる.本研究では,中津干潟に生息するユビナガホンヤドカリPagurus mimutusを対象として,闘争実験により,貝殻サイズへの不満度が闘争行動に影響を与えるかを明らかにすることを目的とした.
闘争実験では,ヤドカリの利用貝殻を人為的に交換し,各個体のフィッティングを調節することにより,貝殻サイズへの不満度を変化させた.まず,中津干潟からユビナガホンヤドカリ566個体を採集し,その半分の個体の貝殻を交換させ(以下,挑戦者),残りの半分については採集時に使っていた貝殻をそのまま利用させた(以下,所有者).プラスチックケースの中で静置させた後,20分間行動を観察した.その後,貝殻サイズへの不満度が,挑戦者の闘争開始,および闘争継続時間に与える影響をそれぞれ評価した.
挑戦者283個体のうち闘争を開始した個体は165個体であった.挑戦者の闘争開始には,挑戦者と所有者の体サイズ差が影響していたが,貝殻のフィッティングへの不満度との影響は認められなかった.しかし,挑戦者のうち理想貝殻サイズよりも小さい貝殻の個体では,自分よりも大きい相手に対しても闘争を開始する傾向が示唆された.また,体サイズが大きいほど,またメスの方が,闘争時間が長かった.一方で,所有者との体サイズ差や貝殻不満度との関係は認められなかった.これらの結果から,ユビナガホンヤドカリでは,貝殻のフィッティングへの不満度は,闘争行動に大きな影響を与えていないものの,利用貝殻サイズが小さい場合は闘争行動が変化する可能性が示唆された.


日本生態学会