| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-387  (Poster presentation)

有明海に生息するカサゴの色彩変異と生態的特徴の関係【A】
Relationship between color variation and ecological characteristics of Sebastiscus marmoratus in the Ariake Sea【A】

*木下慧亮, 園田笙, 吉川晟弘, 山田勝雅(熊本大学)
*Keisuke KINOSHITA, Sho SONODA, Akihiro YOSHIKAWA, Katsumasa YAMADA(Kumamoto Univ.)

生物の体色は多様な生態学的機能を担う重要な形質であり,光環境や生息場といった環境要因に応じて顕著な色彩変異がみられる.例えば,魚類では水深に伴う光環境の変化が色彩分化を駆動する主要な要因のひとつである.沿岸浅場域においても色彩変異を呈す魚種が多くみられる.そこで本研究は,沿岸域の岩礁帯に生息する色彩変異を呈すカサゴ (Sebastiscus marmoratus)を対象として,体色変異と生理・形態・採餌特性との関連を明らかにし,色彩変異が生存戦略に果たす役割を評価することを目的とした.
熊本県上天草市沿岸において2025年3月~11月に185個体を採集し,体表色をRGB値として定量化した.類似度解析によって色彩 (RGB値)のグループ化を行った結果,赤色傾向から黒色傾向へ連続的に変化する,4つの色彩型に分類された.本研究では採集された各個体について,19項目の生態系形質の測定を行った.色彩型間で有意に異なる形質は,肝指数 (HSI),生殖腺指数 (GSI),胃内容指数 (SFI),胸鰭の大きさの4つだった.また,判別分析の結果,色彩型の分類識別にはGSIが最も大きく寄与しており, HSIおよびSFIも寄与した.黒色傾向の強い個体ほどGSIおよびSFIが高く,赤色傾向の個体ほどHSIが高い傾向が認められたことから,黒色型個体は摂取したエネルギーを生殖や積極的な採餌活動に配分する一方,赤色型個体はエネルギーを肝臓に貯蔵する戦略を有すことが示唆された.
カサゴの色彩は連続的な変化であったため,「色彩多型」として定義されないが,色彩型間で,水深に伴う光環境の違いと関連した生理特性やエネルギー配分戦略が分化していることが示唆された.カサゴの体色変異は生息環境と繁殖・生存戦略を結びつける統合的な表現型であり,色彩型間で機能的な多型的構造を表現していると考えられる.


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