| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-388  (Poster presentation)

宝満山のヒキガエルはなぜ"登山”をするのか:餌資源の標高別比較から探る適応的意義【A】
Adaptive significance of "mountain-climbing" behavior in the Japanese toad Bufo japonicus: Relationship with altitudinal variation in food resources【A】

*藤原真生(佐賀大学, ヒキガエルを守る会), 田中明(ヒキガエルを守る会), 徳田誠(佐賀大学)
*Mao FUJIWARA(Saga Univ, Mt.Homan toad conserve society), Akira TANAKA(Mt.Homan toad conserve society), Makoto TOKUDA(Saga Univ)

生物における移動は、その利益がコストを上回る場合に生じると考えられる。移動前後の環境比較は移動形質の進化過程を理解するうえで重要である。標高移動(altitudinal migration)は、短距離で大きく異なる環境へ到達できる点から、環境に敏感で移動能力の低い生物において適応的行動となり得る。一方、高標高域は一般に生物相が貧弱である上、低酸素や強紫外線など、多くの生物にとって過酷な環境条件も伴うため、標高移動の適応的意義には依然として不明な点も多い。さらに、個体追跡の困難さから、移動前後の環境を直接比較して検証した研究は限られている。福岡県の宝満山(標高829m)では、山麓で変態したニホンヒキガエル Bufo japonicus の幼体が、5〜7月頃に集団で山頂へと移動する“登山”行動が報告されている。この現象は他地域では類似の事例が報告されておらず、特異な現象として注目されているものの、その適応的意義は未解明である。本研究では、「高標高ほど幼体の餌資源量が多い」「高標高ほど天敵が少ない」という2つの仮説を立て、登山行動の背景を餌資源や天敵の空間分布から検証した。2025年6〜10月にかけて毎月、低・中・高の3つの標高帯でリター層を採集し、ツルグレン装置で土壌動物を抽出した。分析対象は幼体が利用すると考えられるダニ類および小型節足動物とした。また、ピットフォールトラップ及び目撃情報の解析により、地上徘徊性甲虫やヤマカガシなどの捕食者の生息数も比較した。その結果、ダニ類の個体数は高標高帯で多い傾向を示し、トビムシ類では標高差はみられなかった。天敵の生息数に関しては、仮説を支持する結果は得られなかった。以上より、餌資源の空間分布が幼体の“登山”行動に影響している可能性がある。


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