| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-389 (Poster presentation)
協同繁殖とは劣位個体(ヘルパー)が分散を遅らせ、自分自身の子ではない個体の世話に協力するという利他行動を伴う社会システムであり、哺乳類・鳥類・魚類といった複数の脊椎動物で独立に進化してきた。その進化的要因としては、これまで血縁選択のような間接適応度利益が重視されてきたが近年、それのみでは協同繁殖の進化要因を十分に説明できないことが指摘され、生態的要因の重要性が注目されている。とくに降水量、気候変動や捕食圧といった環境の厳しさが重要であることが示唆されているものの、特に鳥類・哺乳類以外の動物群では協同繁殖進化の生態的背景はほとんど明らかになっていない。
タンガニイカ湖産カワスズメ科魚類では協同繁殖の進化に捕食圧が関与すると示唆されているが、資源を含む複数要因との相互的観点からの検証は進んでいない。本研究では、巻貝を掘り起こして巣として利用するメーリー(Neolamprologus meeli)を対象に、複数の個体群を比較し、捕食圧・資源量・その他生態的要因が社会複雑性(ヘルパー数)に与える影響を検討した。さらに資源量の効果を直接検証するため巻貝追加実験を行った。
その結果、捕食圧が低い環境では巣の資源量がヘルパー数にほとんど影響しない一方、捕食圧が高い環境では巣の資源量の多い縄張りほどヘルパー数が有意に増加する傾向がみられた。また、捕食圧の高い個体群で行った巻貝追加実験では、縄張りに残留する稚魚個体(将来のヘルパー)が増加する効果が確認された。
以上から、高い捕食圧下では巻貝資源が社会複雑性を制約する重要な要因となる可能性が示された。本研究は、メーリーにおける社会構造の形成に捕食圧と資源の両方が重要であることを示し、協同繁殖の進化を理解する上で生態的要因を統合的に評価する必要性を示唆する。