| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-391 (Poster presentation)
日本産トゲオオハリアリDiacamma cf. indicum from Japanでは、不妊のワーカーと繁殖を担うガマゲイトで機能的な分化はあるが、形態的な分化はない。全ての雌成虫が、羽化時に胸部背側に一対の翅芽痕gemmaeを有し、これらを羽化直後に切除されるとワーカーへの分化が決定づけられる。このような翅芽痕切除はガマゲイト存在下の巣内で起こり、ワーカーの噛みつきによる拘束に続いてガマゲイトによる切除という攻撃的な行動が見られる。一連の切除行動は暗い巣内で起こるため、新羽化雌成虫や翅芽痕の存在と位置認識は、視覚より嗅覚刺激に依るものと推測されてきた。しかし、その認識に関わる化学因子は未だ解明されていない。演者らは、この未解明な化学因子の存在証明とその活性本体の構造を探ることを目的とし、本研究では、ワーカーによる翅芽痕切除行動の再現と、その行動解発因子の活性評価法の構築を試みた。先行研究で用いられたガラス玉ダミーに替わって考案した爪楊枝ダミーを用いた検定では、内役ワーカー体表炭化水素画分(CHC)や溶媒コントロール塗布時と比べて、新羽化成虫CHCを塗布することで、ダミーに対する執着が有意に高まることを確認した。さらに、切除の再現のために用いたろ紙ダミーによる検定では、翅芽痕に新羽化成虫CHCを合わせて塗布処理することによって、翅芽痕の切除が確認された。本種のCHCを新羽化成虫と内役・外役ワーカーとの間で主成分分析によって比較したところ、新羽化成虫の識別に寄与し得る複数の特徴的成分の存在が認められた。翅芽痕由来の特徴的な化学物質と新羽化成虫特異的なCHCの2種が協調的に働くことによって、本種の翅芽痕切除行動が解発することを示唆している。