| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-394 (Poster presentation)
ボルバキアは、昆虫類に広く感染する細胞内共生細菌で、宿主の生殖を操作することがある。キタキチョウ Eurema mandarina に感染するボルバキアには、細胞質不和合を誘発する wCI 系統と、遺伝的オスのメス化を誘発する wFem 系統が報告されてきた。キタキチョウは、日本のほとんどの地域においてwCI系統のボルバキアに感染している。一方、沖縄本島や種子島等の一部地域では wCI に単感染したキタキチョウとwCI とwFemの両方に重複感染したキタキチョウが生息している。ボルバキアは母から子へと垂直感染するため、重複感染個体の子は全てメスとなる。そのため、重複感染個体がいる集団では性比がメスに偏っていく。重複感染個体は単感染個体よりも多くのメスを産むため、宿主にボルバキアへの抵抗性が進化しなければ、オスが不足し集団は崩壊すると予測されてきた。しかし、種子島では長年にわたりwFem感染率の高い状態が続いており、その存続メカニズムが議論の対象となっている。本研究では卵から蛹期における温度に着目した。温度はボルバキアの垂直伝播効率などにしばしば影響する。今回の実験には種子島産の重複感染個体およびwCI単感染個体ならびに奈良県産のwCI単感染個体を用いた。これらの個体をキタキチョウの発育限界に近い温度条件や標準的な温度条件などで飼育し、各条件における孵化率と蛹化率および羽化率を算出した。これらの結果から温度が各系統のキタキチョウの生存に与える影響について議論する。