| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-395 (Poster presentation)
近年、ニホンジカの高密度化に伴う森林生態系の劣化が全国的課題となっている。鈴鹿山脈の藤原岳でも希少植物の食害や土壌流出が懸念される。本研究は、藤原岳におけるニホンジカの空間出現パターンと下層植生の量的・質的状態の関係を明らかにし、管理方策を検討することを目的とした。2025年4~11月、登山道沿いでランダム選定した10地点にカメラトラップを設置してRAIを算出し、各地点で1m×1m方形区の植生調査を行い、種数・総被度・不嗜好性植物被度割合を求めた。各指標間はスピアマン順位相関で評価した。RAIは山麓で低く山頂付近で高い空間的不均一性を示し、高RAIの3地点では負の二項分布と地点ランダム効果モデルによるREST法で絶対密度を推定した。個体密度中央値は44.5頭/km²で、山頂部での高密度生息が示唆された。RAI高値地点ほど総被度は高い一方、不嗜好性植物割合も高く、植生は量的減少より不嗜好性種への置換という質的変化が進行していた。以上の知見より、藤原岳においてはRAI高値かつ不嗜好性植物優占地点と植生残存地点を区別した目的別管理が重要であると考える。土砂流出リスクの低減を主目的とする場合は、山頂部の高RAI地点を優先的に防除し、裸地化への移行を抑制する。希少種保全を主目的とする場合は、RAIが比較的低く植生が残る地点を優先して防除し、不可逆的な植生転換を未然に防ぐ。登山環境の維持を主目的とする場合は、高RAI地点で防鹿柵設置と登山道修繕を一体的に実施する。今後は長期モニタリングと防鹿柵実験を通じ、重点保全区の抽出精度と管理効果を検証する必要がある。また、RAIと植生指標を統合した地図化により、優先順位の透明化と管理資源の効率配分を図る。季節変動を踏まえた順応的更新と実装可能性の検証を進め、現地条件に応じた管理への接続を図る。