| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-396  (Poster presentation)

海岸砂丘に生息する非営巣性ウスバカゲロウ類2種の分子系統地理解析【A】
Phylogeography of two non-pit-building antlion species occurring in seaside dunes【A】

*神宮彬彦, 平井規央, 上田昇平(大阪公立大院・農)
*Akihiko JINGU, Norio HIRAI, Shouhei UEDA(Osaka Metropolitan Univ.)

日本の砂浜海岸には、オオウスバカゲロウSynclisis japonica(以下、オオ)とコカスリウスバカゲロウDistoleon contubernalis(以下、コカスリ)が広く分布している。オオは23都道府県、コカスリは4県でレッドリストに掲載されており、両種間で地域個体群の衰退状況は異なると考えられる。本研究では、両種の分子系統地理解析を行い、種間で地理的遺伝構造を比較した。2023年9月から2025年10月にかけて、オオは10地点から計151個体、コカスリは11地点から計113個体を採集した。両種についてミトコンドリアDNAのCOIおよび16S rRNA遺伝子の部分配列を決定し、分子系統解析およびハプロタイプネットワーク解析を実施した。その結果、オオでは、分子系統樹において各個体間の遺伝的距離は小さく、地理的分布に対応した分化は認められなかった。ハプロタイプネットワークは網目状の複雑な構造を示し、異なる地域間でハプロタイプの共有が広域でみられた。一方、コカスリでは、分子系統樹において種内で大きく2つの系統(クレードAとB)に分かれた。クレードAは主に太平洋側の個体を多く含み、クレードBは主に日本海側の個体を多く含んでいた。ハプロタイプネットワークは複数の星状構造が網目状に連結しており、地域間でハプロタイプの共有がみられるものの、分子系統樹と同様に太平洋側と日本海側の個体群で分化する傾向が認められた。マンテル検定の結果、オオでは地点間の地理的距離と遺伝的距離に相関がみられなかったが、コカスリでは有意な相関がみられた。ハプロタイプ多様度および塩基多様度をオオとコカスリで比較した結果、オオは全地点で高い値を示した。一方コカスリではオオと同程度に高い地点もあったものの、それ以外の地点ではオオよりも低い値を示した。以上の結果から、オオでは地域間の遺伝的交流が広域で維持されているのに対し、コカスリでは地域間の遺伝的分化が起こっており、一部の地点を除き遺伝的多様性の低下が生じていると考えられる。


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