| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-397 (Poster presentation)
動物における協力行動は、1個体では達成不可能なタスクを達成可能にするという点で集団に大きな利益をもたらす。真社会性生物では、個体同士の協力行動を前提として進化した形態的および行動的特徴が見られる。
真社会性昆虫であるアリ類には、2個体以上で1つの食物を運搬する行動である協調運搬を行う種が知られている。協調運搬には、単独で運ぶよりも大きく重い食物を一度に運搬することができるという利点がある。
協調運搬は主に調整型と非調整型に大別され、両者は運搬中のデッドロック(方向性の不一致により生じる停滞)の有無によって区別される。調整型はデッドロックを即座に解消する機構を持つことが分かっているが、近年では非調整型も何らかのデッドロック解消機構を備えていることが示唆されている。
本研究では、非調整型協調運搬を行うFormica japonica (クロヤマアリ) を用いて、餌の形状が運搬の成功や動態に与える影響を動画解析によって調べた。
実験では棒状、シート状、キューブ状の異なる形状かつ同質量の3種類の餌を用いて、野外におけるF. japonicaの協調運搬行動を動画撮影により記録した。動画からそれぞれの餌形状における運搬成功率、運搬速度、運搬に参加した個体数など、協調運搬に関わる複数の行動指標を測定した。
これまでF. japonica においては運搬に多個体が参加しても運搬速度は上昇しないことが知られていたが、本研究では棒状の餌でのみ、運搬に参加した個体数と運搬速度の間に正の相関が見られた。これは非調整型協調運搬にも状況に応じてデッドロック解消機構が存在することを示唆している。
本研究は、アリ類の非調整型協調運搬で見られる集団的な調整機構について理解を深めるものであり、社会性昆虫における協力行動中の合意形成に関する知見を提供する。