| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-398  (Poster presentation)

シロアリにおけるカーストおよび集団構成による移動パターンの種間比較【A】
Species comparison of movement patterns across castes and social contexts in termites【A】

*佐藤耀弥(東京都立大学), 菊池顕生(沖縄科学技術大学院大), 水元惟暁(オーバーン大学), Adam Linc CRONIN(TMU), Isaac PLANAS-SITJA(RIKEN)
*Akiya SATOH(TMU), Kensei KIKUCHI(OIST), Nobuaki MIZUMOTO(Auburn University), Adam Linc CRONIN(TMU), Isaac PLANAS-SITJA(RIKEN)

社会性昆虫では、カースト間分業によって個体間の役割分担が組織化されている。しかし、その集団機能が個体レベルでどのような行動則に支えられているのかは、十分には明らかになっていない。これまでの研究は主にカーストごとの機能や形態的特徴に注目してきたが、各カーストの具体的な行動パターンや、それらが状況に応じてどのように変化するのかについては、知見が限られている。単独条件や集団条件といった状況依存的な行動の変化を理解することは、個体の行動則とそれが集団機能にもたらす役割との関係を解明するうえで重要である。シロアリは、この問題を検討するうえで有効な研究対象である。特にソルジャーは、巣内で防御拠点を形成する種と、巣外へ出て応戦する種という異なる防衛戦略を示すことが知られている。これらの戦略は、個体が空間内でどのように位置取りし、どの程度活動するかといった行動様式と関連している可能性がある。そこで本研究では、防衛戦略の異なる複数種を対象に、ソルジャーおよびワーカーを単独または複数個体で円形アリーナ内に配置し、動画追跡によって得られた位置情報から移動速度や空間利用傾向などの行動指標を定量・比較した。その結果、防衛戦略の異なる種間で一部の行動指標に差異が認められた。また、単独条件と集団条件を比較したところ、種やカーストによって、単独条件から集団条件への移行に伴う行動パターンの変化の傾向が異なる可能性が示唆された。これらの結果は、生態学的背景の異なるシロアリにおいて、個体の行動特性が集団状況のもとで一様に発現するわけではない可能性を示しており、個体の行動則と集団機能との関係を理解するための基盤的知見を提供する。


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