| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-399  (Poster presentation)

集団構成がショウジョウバエの意思決定に与える影響〜連続Y字迷路による検証〜【A】
The effect of group composition on decision-making in Drosophila melanogaster: A test using a Y-maze【A】

*奥山登啓(千葉大・院・融), 佐藤大気(千葉大・院・理, 千葉大・IAAR), 高橋佑磨(千葉大・院・理)
*Takahira OKUYAMA(Grad. Sci. Eng., Chiba Univ.), Daiki X. SATO(Grad. Sci., Chiba Univ., IAAR., Chiba Univ.), Yuma TAKAHASHI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

多くの生物は自然界で群れて活動している。群れることが個体間の相互作用を強化し、集団パフォーマンスを向上させることが、理論研究により明らかにされてきた。一方で、このような先行研究の多くは集団内の個体の潜在的な均質性を仮定しており、個体間の異質性が集団の採餌パフォーマンスに与える影響は十分に検討されてこなかった。一部の研究では、遺伝的に異質な個体間での相互作用が、群れ行動を創発的に形成することを示唆している。ただし、どのような異質性が、どのような条件で、どのようにして群れ行動を創発するかについて、一般的な理解は得られていない。そこで本研究では、Y字迷路を用いて集団の組成が採餌パフォーマンスに与える影響とその行動学的メカニズムについて検証した。実験には、野外集団に由来する遺伝的に多様なキイロショウジョウバエ10系統を用いた。1個体の条件と単一系統の6頭からなる画一集団条件、2系統を3頭ずつ混合した異質集団条件の3条件を設定し、迷路内での餌探索行動を50分間記録した。その結果、交差点での左右選択の意思決定には他個体の存在が強く影響していること、またその影響は相互作用する系統の組み合わせによって異なることが示された。さらに、その後の摂食実験から、異質な集団において採餌パフォーマンスが非相加的に向上すること、またその効果は左右選択の意思決定方式によって説明できることがわかった。すなわち、Y字の交差点で同系統側を好んで選択する個体からなる集団は、異系統側を好んで選択する集団と比べて、採餌量が多い結果となった。これらの結果は、異質性が個体の意思決定に作用し、個体がもつ本来の行動規範を変化させることで、群れ行動ダイナミクスに波及的な影響をもたらすことを示唆している。本発表ではこうした結果をふまえ、異質性が群れ行動に果たす役割と、その行動学的なメカニズムについて総合的に議論する。


日本生態学会