| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-402  (Poster presentation)

ショウジョウバエの社会的消化が乾燥環境での生存率に与える影響【A】
The effects of social digestion on the survival under dry environment in Drosophila【A】

*中村友, 高橋佑磨(千葉大学)
*Yu NAKAMURA, Yuma TAKAHASHI(Chiba Univ.)

気候変動や都市化の進行の帰結の一つとして気候の極端化や乾燥化が挙げられる。乾燥化は、デトリタスや腐肉の乾燥を早めることで腐食者や腐肉食者成長を抑制することが知られている。腐敗した果実などを餌資源として利用するショウジョウバエでは、幼虫が互いに集合して採餌を行なう。このとき幼虫は体外に消化酵素を分泌し、効率的な栄養吸収をしている。このような協力行動は集団採餌や社会的消化と呼ばれる。本研究では、キイロショウジョウバエを用い、幼虫における集団採餌が乾燥した餌資源の利用効率に与える影響を検証した。まず、同一集団に由来する19の独立した単雌系統を用いて集団採餌の程度を定量した。具体的には、2枚のガラス板の間に培地を薄く伸展させて、40頭の3齢幼虫を導入し、集団採餌に参加している個体の割合を測定したところ、集団採餌の程度には系統間で有意差が認められた。次に、通常の飼育に用いている培地をコントロール条件、それに対して水分量25%にした培地を乾燥条件とし、各条件の培地に32個の卵を導入して7日後に蛹の数を測った。その結果、乾燥条件ではほとんど蛹化せず、系統間で蛹化数に有意な差が検出されなかった。一方、コントロール条件では蛹化数に系統間で有意な差が認められた。最後に、19の系統を集団採餌の程度が高い系統と低い系統でグループ分けして蛹化数との関係を検証したところ、通常培地の蛹化数は、集団採餌の程度が低いグループより、高いグループの方が有意に多かった。ただし、乾燥条件ではどの系統でも蛹化数がほぼ0であったので、集団採餌の程度と蛹化数には有意な関連性は検出されなかった。これらの結果は、集団採餌が幼虫期の生存や発育に正の効果を与えることを示唆している。しかし、今回の実験では、集団採餌が乾燥による生存率の低下の克服に寄与するとはいえなかった。今回設定した乾燥条件が適切でなかったことがその原因の一つと考えられる。


日本生態学会