| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-404  (Poster presentation)

出芽酵母の過剰発現プロファイリングによる多様性の進化実験と成長特性の変化【A】
Artificial selection for balanced genetic variation and changes in growth patterns in Saccharomyces cerevisiae【A】

*鈴木ひかり(千葉大学), 阿部佳都(岡山大学), 守屋央朗(岡山大学), 高橋佑磨(千葉大学)
*Hikari SUZUKI(Chiba Univ.), Keito ABE(Okayama Univ.), Hisao MORIYA(Okayama Univ.), Yuma TAKAHASHI(Chiba Univ.)

集団中の遺伝的多様性は、進化の素材となるだけはなく、多様性そのものが即時的に集団全体のパフォーマンスを向上させることもある。パフォーマンスの向上は大きく二つのプロセスによって駆動されている。一つ目は、「ニッチ分化」である。これは、異なったアリルをもつ個体が別々の資源を利用することで環境中の多様な資源を効率的に利用できることに由来するものだ。二つ目は、「相互促進」である。ある遺伝子型の個体の放出する代謝産物を別の遺伝子型の個体が利用するというクロスフィーディングなどがこのプロセスで想定される一例である。しかし、数ある遺伝的変異のうち、どの遺伝子の多様性がこれら二つのプロセスに関与するかはわかっていない。ただし、ある環境において集団の機能性の向上につながる遺伝的多様性に対しては、その環境において平衡選択が働いていることが理論的に示されている。すなわち、共存可能な多様性を絞り込むことで、組み合わさることにより機能を発揮する遺伝的多様性を探索できる可能性があるのである。本研究では、出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae を用いた培養実験により遺伝的多様性の進化過程を調べるとともに、共存した株の組み合わせがもつ機能性を調べることで、上述の二つのメカニズムに関連する遺伝子を探索することを目指した。多様性を有する集団として過剰発現プロファイリングを用いた。この集団には、酵母がもつ6000種類のタンパク質の機能をそれぞれ30倍程度増強させた6000株の酵母が含まれる。5種類の糖を混合した多栄養培地を用い、48時間ごとの継代培養を繰り返し、増殖パターンを観察した。その結果、10回目の継代において増殖率や環境収容力の高まる変化が生じた。いくつかの時点でのサンプルについてロングリードシーケンスを行ない、培地内に優占している酵母株を同定したところ、 USV1NDL1 などの炭素源の代謝に関わる遺伝子や細胞増殖に関わる遺伝子が優占してくる傾向が認められた。


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