| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-405  (Poster presentation)

都市で進化する精子:繁殖や発生に及ぼす夜間光の波長依存的影響の検証【A】
The evolution of sperm in a city: The wavelength dependent effects of nighttime light on reproduction and development.【A】

*高本龍真, 高橋佑磨(千葉大・院・理)
*Ryushin TAKAMOTO, Yuma TAKAHASHI(Graduate School of Chiba Univ.)

都市化は生物に対してさまざまな非生物的ストレスを与える。なかでも夜間人工光(ALAN)はもっとも普及している要因の一つである。これまでの研究により、ALANが概日リズムや個体の生理機能に影響することは報告されてきたが、オスの繁殖能力や次世代への影響については、ほとんど解明されていない。本研究では、ALANに曝露された個体への「直接効果」と、父親を介した「間接効果」を区別することにより、オウトウショウジョウバエ(Drosophila suzukii)における都市適応を包括的に評価した。直接効果について、複数の都市および郊外集団に由来する系統を用い、異なる波長のALANが羽化のタイミングと体サイズ、生殖形態に与える影響を評価したところ、発生と形態形質がALANによって影響を受けることが明らかになった。また、都市集団は羽化のタイミングがばらつく一方で、体サイズや精子頭部サイズのばらつきは抑制されていた。このパターンは、生態的に重要な形質を安定させるために、都市集団が光ストレス下において発生のタイミングを能動的に調整する適応戦略をとることを示唆している。間接効果について、父親のみがALANに曝露された次世代個体の生残率や性比、体サイズを測定したところ、ALANが子の孵化率に影響していることがわかった。なお、都市集団では世代を超えて孵化率が維持されていた。これはALANがオス親を介して子の形質に影響する一方、都市個体群は世代を超えた頑健性を定着させており、父親のALAN曝露から次世代を保護する進化を遂げていることを示唆している。本研究は、ALANの影響が即時的な反応にとどまらず、世代を超えて伝播することを示した。これは、個体の直接的反応と父親を介した間接的経路を統合することで、都市適応に関する包括的な理解の必要性を示唆している。


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