| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-408  (Poster presentation)

北アルプス白馬岳山麓におけるニホンジカの生息状況評価【A】
Assessment of Sika Deer (Cervus nippon) Distribution in the Foothills of Mount Shirouma, Northern Japan Alps.【A】

*泉貴大(東京農工大学), 尾関雅章(長野県環境保全研究所), 黒江美紗子(長野県環境保全研究所), 宇野裕之(東京農工大学), 諸澤崇裕(東京農工大学)
*Takahiro IZUMI(Tokyo Univ. Agri. Tech.), Masaaki OZEKI(Nagano Env. Con. Res. Inst.), Misako KUROE(Nagano Env. Con. Res. Inst.), Hiroyuki UNO(Tokyo Univ. Agri. Tech.), Takahiro MOROSAWA(Tokyo Univ. Agri. Tech.)

近年、ニホンジカ(Cervus nippon:以下シカ)は、生息が困難とされてきた日本海側の多雪地域にも分布を拡大している。北アルプス白馬岳は、希少な高山植物群落を有し、シカの分布拡大の最前線に位置するが、山麓部においてシカ個体群が現在どのような侵入段階にあるのか、その実態は把握されていない。本研究では、2025年7月~11月にかけて、白馬岳山麓部の広域で、自動撮影カメラ調査、ボイストラップ調査及び下層植生調査を行い、個体群構成と植生への採食圧の両面から、本地域におけるシカの生息状況を評価した。
自動撮影カメラ調査では、標高2200m付近の高標高地域までシカが撮影された。相対的に標高の高い地域では撮影頻度が低くオスの撮影が主体である一方、相対的に標高の低い地域においては、撮影頻度が高く、性比がメスに偏りつつある傾向が確認された。ボイストラップ調査では、ラッティングコールが標高2000m付近でも検出され、カメラで撮影されなかった地点においてもオスの生息を確認することができた。下層植生調査では、多数の大型草食獣の食痕が確認され、食痕数は2018年の調査と比較して増加傾向にあった。
以上の結果から、本調査地の低標高地域ではシカ個体群が遅滞相から増加相へと推移し、メス個体群の定着が進んでいることが示唆された。また、高標高地域においてもオスの分散が進行しており、分布域が拡大していると考えられる。高山植物群落への影響を防ぐためにも、山麓部のシカ個体群の早急な管理対策が必要である。


日本生態学会