| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-409  (Poster presentation)

ウグイにおける耐酸性適応機構の可塑性【A】
Plasticity of Acid Tolerance Mechanisms in the Japanese Dace (Pseudaspius hakonensis)【A】

*永安巧弥, 細将貴(早稲田大学)
*Takumi NAGAYASU, Masaki HOSO(Waseda University)

一部の個体群が極端に苛烈な環境に生息し、適応している状況(局所適応)は、適応進化のメカニズムを理解するうえで有用な研究システムである。下北半島・恐山の火口湖(宇曽利山湖)に生息する淡水魚のウグイは、鰓に配置された特殊な塩類細胞のはたらきにより、湖内のpH 3.0近い強酸性の水質に生理的に適応していることが知られている。実際、移植実験により、通常の河川棲個体群に由来するウグイにとって宇曽利山湖の水質が致死的であることが確かめれていることから、恐山個体群のウグイは脊椎動物としては珍しい耐酸性の局所適応を実現している例であるとされてきた。しかし、この耐酸性が可塑的に獲得されているわけではないということは、十分に検証されてこなかった。そこで本研究では、長期間の飼育実験を実施することにより、耐酸性の可塑性と適応のコストを量的に評価した。実験では、酸性(pH4程度)の水槽と中性の水槽で恐山個体群と通常河川個体群を飼育し、その応答を比較した。体重変化を適応コスト、塩類細胞の生成を生理応答の指標とした。この結果、酸性条件下で発達する塩類細胞は、恐山個体群と通常河川個体群とで主要な形成箇所に違いが見られることが明らかになった。また、中性条件下では通常河川個体の方が体重増加しやすく、酸性条件下では恐山のウグイの方が体重増加しやすい傾向が見られた。これらの結果は、恐山個体群に酸性への遺伝的な適応基盤があることを示唆している。本発表ではさらに、遺伝的同化による局所適応のプロセスとその遺伝的基盤について詳しく議論する。


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