| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-412 (Poster presentation)
生物の模様は、隠蔽や異性へのアピールなど様々な機能を有し、その機能の相対的重要性が変化しうる、発達段階や環境と模様変異の関係に着目することで模様の究極要因に迫ることができる。一方で、模様の形成は至近的には色素細胞の相互作用や体表の拡張などが関与するため、個体の遺伝的特徴や成長履歴を解明する手がかりになりうる。従来の模様研究の対象は究極・至近のどちらか一方に偏り、両者を同時に扱う研究は限られていたが、両者を統合的に捉えることで模様への理解をより深められると考えられる。
アメマス(Salvelinus leucomaenis)の体側の模様は明瞭な白斑であり、形状の定量化や至近的な発達過程の推測が容易である。また、生活史には二型があり、個体要因と模様変異の関連を調べるのに適している。
本研究では、アメマスの体側の白斑形態を画像解析し、形態の個体間変異と個体要因の関係を解明することを目的とした。今回は、①隠蔽仮説:肥満度の低い個体は白斑がいびつで、回遊型の個体は背景同化に有利な大きな白斑を持つ、②シグナル仮説:優位な個体やオスほど白斑が大きい、③個体の質仮説:大きく整った白斑は成長の良さを反映する、の3仮説を検証した。
北海道内の河川で採集したアメマス計533個体と、2020年~2022年に標津サーモン科学館で作出・飼育したアメマス計46個体を対象とした。Segment Anything Modelを用いて個体左側面の画像から白斑を抽出し、ImageJで斑点数や面積、円形度を算出した。白斑のデータと、体長、肥満度、性別、生活史、飼育との関係について解析を行った。
肥満度が高い個体、回遊型で白斑が大きい傾向が得られたのは、3つの仮説に整合していた。一方、シグナル仮説と異なり、メスの方が白斑が大きかった。また、飼育個体は白斑が大きい一方で円形度は低く、個体の質仮説とは異なる結果となった。隠蔽・シグナル両機能が部分的に示唆される一方で、良いコンディションが整った形状に直結するとは限らないことが示された。