| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-414 (Poster presentation)
1個体が雌雄両方の繁殖能力を持つ同時的雌雄同体の生物にとって、雌雄機能への資源配分の比率(性配分)は、繁殖成功度を規定する重要な生活史形質である。性配分理論では、雌雄の繁殖投資と繁殖成功度との関係を定式化により仮定し、繁殖成功度の総和が最大となる最適性配分を求めることで、さまざまな生態学的要因に応じた性配分の変化を説明してきた。しかし、繁殖投資と繁殖成功度との関係を実証した研究は少なく、性配分の変化が理論で仮定されるような繁殖成功度との関係を持つのかはわかっていない。これらの実証は、従来の理論予測および実証研究における性配分の評価方法の妥当性を検証する上で重要である。そこで本研究では、寄生に伴う性配分の変化を対象に、雌雄機能への繁殖投資と繁殖成功度との関係を明らかにすることを目的とした。
対象は、寄生によって性配分が通常よりも雄に偏ることがわかっているイワフジツボとした。2019年5月に和歌山県白浜町にて対象種の着生した石を持ち帰り、解剖とマイクロサテライト解析による父性判定を行うことで、寄生の有無、雌雄それぞれの繁殖投資量、性配分、雌としての繁殖成功度(卵数)および雄としての繁殖成功度(授精卵数)を評価した。
その結果、雌雄両機能への投資と繁殖成功度はどちらも寄生時に減少した。一方で、繁殖成功度から算出された最適性配分は、寄生時に雌に偏り、実際の性配分の変化とは一致しなかった。そのため今回の結果からは、寄生に対して宿主が性配分を変化させることで、繁殖成功度の低下を緩和しているとはいえなかった。また、繁殖投資あたりの繁殖成功度の獲得効率は雄機能で変化し、非寄生時よりも寄生時に低下した。このことから、最適性配分の予測には、繁殖投資が繁殖成功度に変換される際の獲得効率の変化を考慮する必要があることが示唆された。