| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-415 (Poster presentation)
ニホンジカの繁殖システムは乱婚または一夫多妻制とされている。そのため、オスの繁殖成功は行動観察だけでは把握することはできず、遺伝情報を用いた血縁解析が必要となっている。しかしながら、これまで野生下のオスの繁殖成功(仔の数)を血縁解析によって明らかにした研究はわずかである。
本研究では北海道・厚岸町愛冠の野生エゾシカ集団において個体識別と行動観察により母仔関係が判明している母と仔、および父親候補となるオス個体を中心に血縁解析を行い、仔の父親の推定を試みた。調査地において、主に識別個体から非侵襲的遺伝サンプルである糞117個体分を採取した。この中には2020年以降の継続調査によって判明している母仔51ペア(69個体)と、父親候補となる2歳以上のオスが26個体含まれていた。糞サンプルからDNAを抽出し、14のマイクロサテライトマーカーで遺伝子型を決定した。血縁解析ソフトCervusとCOLONYを用い、信頼度を95%以上に設定し、母仔ペアの仔の父親を推定した。
CervusとCOLONYを合わせて17個体の仔の父親が推定され、推定された父親の個体数は6個体であった。この6個体はすべて推定年齢5歳以上であり、社会的順位が高かった可能性がある。最も多く仔を残したオスは2020年から2025年まで仔を毎年残しており、6年間で仔を10個体残していた。この個体以外に複数年で仔を残したと推定されたオスは1個体しかいなかった。母仔51ペアと推定父親6個体の血縁関係をもとに家系図を作成した。それにより、調査地には、最も多く仔を残したオスを含む41個体からなる大きな血縁集団が存在していることが分かった。