| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-419 (Poster presentation)
動物の学習能力は加齢に伴って変化することが知られており、昆虫においても同様の研究が行われてきた。なかでも、ミツバチ・ショウジョウバエに関する研究がその中心を担っており、加齢に伴い学習速度や学習成果を記憶し続ける時間(記憶保持時間)が低下することが指摘されている。しかし、ミツバチは社会性昆虫であるため、役割分化やそれに伴う経験の違いが学習能力に与える影響を排除することが難しく、ショウジョウバエに関しては記憶保持時間のみ検討されており学習速度の変化に関しては言及されておらず、加齢そのものが学習能力に及ぼす影響を検討されているとはいいがたい。そこで本研究では、単独性昆虫であり大型で観察・操作が容易なカブトムシ( Trypoxylus dichotomus) 成虫を用いて、成虫期の日齢が嗅覚連合学習の学習速度や記憶保持時間に与える影響を明らかにすることを目的とした。カモミール、サンダルウッド、ジャスミンの3種の匂いのうち2種を条件刺激とし、一方を糖溶液と対にするCS+、もう一方を糖溶液と対にしないCS−として口吻伸展反射(PER)条件づけを行い、カブトムシが加齢に伴って特定のにおいを学習する速度や記憶保持時間が変化するかを比較した。各個体について、CS+に対してのみ初めてPERを示すまでに要した訓練回数を学習速度の指標とした。さらに、学習成立後24、48、72時間後に、2つの条件刺激(CS+およびCS−)を再提示し、糖溶液を与えない条件下でのCS+へのPER反応の有無を記録した。この反応の有無を記憶保持の指標とした。その結果、学習速度は日齢による差が確認され、24日齢個体において最も速い学習が示された。一方、記憶保持時間については、日齢間の変化を適切に評価できる結果は得られなかった。24日齢で学習速度が最大となったことは、繁殖活動や資源探索が重要となる時期に学習能力を高めることで、適応度は最適化される可能性がうかがえた。