| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-421  (Poster presentation)

非繁殖期において若いウミネコはより長距離の移動をするのか?【A】
Do younger black-tailed gulls move longer distances during non-breeding season?【A】

*杉山響己(名古屋大学), 水谷友一(同志社大学), 成田章(青森県立八戸聾学校), 後藤佑介(名古屋大学), 依田憲(名古屋大学)
*Hibiki SUGIYAMA(Nagoya Univ.), Yuichi MIZUTANI(Doshisha Univ.), Akira NARITA(Hachinohe School for the Deaf), Yusuke GOTO(Nagoya Univ.), Ken YODA(Nagoya Univ.)

鳥類の移動戦略は、加齢による身体能力や生理状態の変化、経験の蓄積に伴い、生涯を通して変化する。これまで、移動の年齢差に関する研究は主に幼鳥と成鳥の比較に焦点が当てられてきたが、成鳥となった後の生涯にわたる移動の変化については十分に解明されていない。特に非繁殖期は、生存に適した環境を求め、広範囲に移動する重要な時期であり、その行動の年齢に伴う変化を解明することは、成鳥の生活史戦略を理解する上で不可欠である。そこで本研究は、長寿命な海鳥を対象に、加齢が非繁殖期の移動に与える影響を明らかにすることを目的とした。
2020年から2024年にかけて、青森県八戸市蕪島のウミネコ(Larus crassirostris)の成鳥を対象に、GPSロガーを用いた通年追跡(のべ68羽)を行い、非繁殖期の移動特性と年齢の関係を検証した。得られた移動データから、最遠到達距離、1日の積算移動距離、および空間密度クラスタリングに基づく滞在地数を算出し、ベイズ推定を用いた一般化線形混合モデルにより年齢の影響を解析した。
ウミネコの繁殖終了後約1ヶ月間の移動は、北上(53羽)、南下(7羽)、繁殖地周辺への残留(8羽)の3パターンに大別されたが、経路選択に年齢の影響は認められなかった。このうち、大半を占める北上個体を対象に、非繁殖期全体の移動と年齢の関係について解析した結果、最遠到達距離および滞在地数に明確な年齢の影響は認められなかったが、1日の積算移動距離は高齢個体ほど短い傾向が示された。この結果は、広域的な空間分布は年齢に関わらず維持される一方で、経路選択や滞在地内での移動は高齢個体ほど最適化、あるいは抑制していることを示唆する。今後は、滞在地間の移動や滞在期間といった詳細な解析を行うとともに、過去の繁殖状況がこれらの行動差に与える影響や、その行動差が翌年の繁殖成績へ及ぼす影響について解明していく。


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