| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-422  (Poster presentation)

ウミネコの繁殖成績は渡りの性差を生み出すのか?【A】
Does the breeding success of the black-tailed gull make sexual difference in migration?【A】

*小出胤樹(名古屋大学), 依田憲(名古屋大学), 後藤佑介(名古屋大学), 水谷友一(同志社大学), 杉山響己(名古屋大学)
*Kazuki KOIDE(Nagoya Univ.), Ken YODA(Nagoya Univ.), Yusuke GOTO(Nagoya Univ.), Yuuichi MIZUTANI(Doshisha Univ.), Hibiki SUGIYAMA(Nagoya Univ.)

鳥類の渡りは季節的な資源の変動に応答した適応的行動とされているが、渡りの時期や非繁殖期の分布は繁殖成績の影響を受けることが知られている。この差の要因の一つとして、繁殖期に要したエネルギー量の違いが考えられる。さらに、繁殖期には役割分担の性差があり、例えば雄は主に巣の防衛で大きな役割を担い、雌は産卵のために多くのエネルギーが必要である。このような背景から、繁殖成績が渡りに与える影響には性差が生じる可能性があり、産卵というエネルギー消費が多いイベントがある雌の方が雄に比べ、渡りが繁殖成績の影響を受けやすく、繁殖成績が高いほど渡り開始が遅く、渡り距離が短くなると予想される。本研究では、青森県八戸市の蕪島で繁殖を行うウミネコ(Larus crassirostris)の成鳥にGPSロガーを装着し、装着個体の繁殖成績を追跡した。2020年から2024年にかけて得られた36個体の移動データと繁殖成績を用いて個体の繁殖地からの離脱から90日までの期間を対象に解析を行った。移動速度と繁殖地からの離脱日には雌雄差がみられなかったが、繁殖地からの距離は雄の方が遠く、海上に滞在している割合は雌の方が高かった。一方で、産卵数や巣立ち雛数といった繁殖成績は、これらの雌雄差に有意な影響を与えなかった。以上の結果から、ウミネコの渡り移動にみられる性差はその年の繁殖成績よりも非繁殖期の雌雄間の競争的排除やエネルギー必要量の違いなどに起因する可能性があり、更に過去の繁殖成績の効果やつがい相手との協調を考慮した解析が必要である。今後は、同一個体の移動と繁殖成績を複数年追跡することや、繁殖期のエネルギー消費量を定量化することで渡りの性差の形成される要因を明らかにしていく。


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