| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-425 (Poster presentation)
生物が同一種内において、生息地や移動パターンなどの生活史の多様性を持つことが、同種の安定性や持続可能性をもたらすと考えられている。したがって、対象種の生息地やその移動パターンを把握することは、同種の保全を行う上で重要なデータとなる。本研究では、水産有用種であるアユ(Plecoglossus altivelis)を対象として、ダム建設等による人為的撹乱が、同種の生息地多様性に与える影響を耳石ストロンチウム同位体比(87Sr/86Sr)分析を用いて検証することを目的とした。
今回は、河川本流に大きなダムがなく河川連続性が担保されている長良川と、河川本流にダムが多く、河川連続性が断絶されている揖斐川および木曽川において調査を行った。各河川の多地点において採水を行い、その87Sr/86SrをMC-ICP-MSで測定した。加えて、河川水の87Sr/86Srマップを作成した。また、上記3河川の主要な産卵場において、成熟アユを採捕した。各個体から耳石を取り出した後、その中心部から縁にかけての87Sr/86SrをLA-MC-ICP-MSで測定した。
長良川で採捕されたアユでは、耳石中心部から縁にかけての87Sr/86Srの多様な変化パターンを確認することができたほか、河川の上流部から下流部まで幅広い流域が生息地として利用されている可能性が示された(Nagayama et al.,2025)。一方、揖斐川・木曽川で採捕されたアユの耳石87Sr/86Srの変化パターンの多様性は長良川よりも低く、生息地として利用されている流域も長良川と比較して限定的であった。これは、河川連続性がアユの生息地多様性に寄与することを示唆している。また、全採捕個体のうち養魚場出身と推定される個体数は324個体中わずか19個体であった。これは、いずれの河川においても放流個体の天然個体への再生産の寄与率が低いことを示している。