| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-426 (Poster presentation)
近縁種間の生物が同じ資源を利用する場合、種間競争が生じやすいが、共存メカニズムが機能することで生物多様性の維持が可能となる。寄生性等脚類のヤドカリノオジャマムシ(以下オジャマムシ)とヤドカリノハラヤドリ(以下ハラヤドリ)は、干潟に優占するユビナガホンヤドカリの腹部表面に寄生する。本研究は同一干潟に生息するこれら2種の共存メカニズムの解明を目指し、幼体から成体の生活史及び成長に伴う宿主の共有状況を明らかにした。調査は2022年5月から2023年4月に毎月三重県志登茂川河口の潮間帯からユビナガホンヤドカリを定量採集し、寄生者の等脚類を種別及び成長段階別に計数した。
調査を通じて合計5212個体のユビナガホンヤドカリを採集した。寄生率はともに秋から冬の2種の初期幼体が出現する時期に増加し、オジャマムシでは12月に42%、ハラヤドリでは2月に39%のピークに達した。オジャマムシの初期幼体はハラヤドリより1ヶ月早い10月に出現し、先に成長するのに対して、ハラヤドリの初期幼体は11月から翌年3月にかけてハラヤドリ全体に対して高い割合で長期間出現した。初期幼体では両種間で宿主サイズに差は認められなかった。12月から翌年3月の間に、寄生されたヤドカリの32%で同一宿主に2種の幼体が同時寄生していた。しかし、成体では調査期間中に2種の同時寄生は観察されなかった。これらの結果から、2種の幼体は同じ宿主資源を利用し、同時寄生が生じることから幼体段階のある時点で競争が起こり、成体になるまでに一方が排除されると考えられる。これら2種の共存は、オジャマムシが早期着底をして先に成長する一方、ハラヤドリでは多数かつ長期の加入をして寄生数で優位となる時間的ニッチ分割によって可能になっていることが示唆された。