| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-427 (Poster presentation)
移動は動物の成長や繁殖の生活史戦略において最も重要な要素の一つである。スジエビPalaemon paucidensは日本では北海道から奄美大島まで分布する淡水性甲殻類で、国内では遺伝的に4つのグループ(タイプA、BI、B-II、C)に区別される。Aタイプには淡水域で一生を過ごす「陸封型」と海と河川を行き来する「回遊型」が含まれるが、B・Cタイプは「回遊型」のみである。琵琶湖内に生息するスジエビはAタイプであり、湖内で一生を過ごす「陸封型」とされている。しかし、琵琶湖の流入河川である和邇川において多数のスジエビが遡上している様子が観察された。この遡上行動は、琵琶湖にも「回遊型」のスジエビが生息することを示唆するが、これまで既存研究はない。そこで本研究では、琵琶湖流入河川におけるスジエビの生活史解明を目的とし、和邇川における流程分布の季節的変化を調査した。
流程分布調査は令和6年6月から令和7年5月まで琵琶湖ヨシ群及び和邇川下流域から上流域の7地点で毎月1回夜間に実施した。
その結果、採集個体数は、7月と8月にヨシや河口付近で増加し、8月には中流域でも増加した。9月から11月には河口付近で減少し、中流・上流域で増加した。12月以降はほとんどの地点で減少し、変動もあまり見られなかった。7月の頭胸甲長は、河口域から上流域へ向かうほど大きくなる傾向がみられ、琵琶湖ヨシ帯と河口域では、着底直後とみられる頭胸甲長2 ㎜以下の小型個体が採集された。また、中流域では8月から11月にかけて、月を追うごとに体サイズが大きくなる傾向が認められた。以上の結果から、和邇川におけるスジエビは、6月から8月頃に琵琶湖及び河口域で着底した個体が、6月中旬から11月中旬にかけ成長しながら河川上流域に移動していることが明らかになった。これは回遊型の淡水エビにみられる生活史型と一致しており、琵琶湖流入河川である和邇川には回遊型のスジエビが生息する事が強く示唆された。