| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-429  (Poster presentation)

沖縄島北部のケナガネズミによる巣箱の利用パターン【A】
Nest box usage patterns of Diplothrix legata in the northern part of Okinajima Island, Japan【A】

*東哲平, 小林峻(琉球大学)
*Teppei HIGASHI, Shun KOBAYASHI(Ryukyu Univ.)

樹洞は多くの哺乳類や鳥類が捕食回避や繁殖成功率を上げるために、繁殖場所や休息場所として利用される。沖縄島北部は、在来食肉目が生息していない特異な島嶼森林生態系で、一年中温暖湿潤な気象条件であり、多種多様な樹洞利用種が生息している。哺乳類や鳥類の樹洞利用パターンは、生息地の捕食者や気候条件に適応するように進化してきたと考えられる。ケナガネズミDiplothrix legataは、沖縄島北部、奄美大島および徳之島に固有の樹洞営巣性齧歯類である。湿潤亜熱帯の小島嶼に生息する本種は、島嶼の生態系や気候に適応的な樹洞利用パターンを示す可能性がある。本研究では、巣箱を用いてケナガネズミの樹洞利用の季節変化および営巣場所の特徴を明らかにすることを目的とする。
沖縄島北部の自然林4地点に計83個の大型の巣箱(103cm×33cm×30cm)を架設し、2022年3月から2025年8月までの約3年間、毎月巣箱への営巣の有無を確認し、繁殖期と非繁殖期の終了時に巣材を回収した。また、これらの巣箱のうち23個の巣箱についてカメラトラップで巣箱内のケナガネズミの行動を撮影した。さらに、繁殖期(9-2月)に2個の巣箱に温度ロガーを設置し、巣箱内気温と巣箱外気温を記録した。
20個の巣箱で計28回の営巣が確認され、出生直後の幼獣が3個の巣で確認された。営巣は、繁殖期(9-2月)に25回、非繁殖期(8-3月)に3回確認された。本種が営巣した巣箱の高さは4.5±1.2 m、営巣しなかった巣箱の高さは3.8±1.4 mで、営巣した巣箱の方が有意に高い位置にあった(p<0.05)。一方、樹木の胸高直径や巣箱入口の方角は、営巣した巣箱と営巣しなかった巣箱で、有意な差はなかった(p>0.05)。繁殖期中の巣箱内気温は外気温よりも昼間は0.4℃、夜間は0.1℃程度高かった。ケナガネズミは、沖縄島北部の上位捕食者である大型ヘビ類捕食者を回避できる高所にある巣箱で、育仔に適した保温性のある営巣場所として巣箱を選択した可能性がある。


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