| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-431 (Poster presentation)
捕食は進化における主要な選択圧であり、被食者には形態的・行動的・化学的に多様な防衛戦略が進化してきた。しかし、捕食者は体サイズや捕食様式が大きく異なるために、同一の防衛形質がすべての捕食者に対して有効とは限らない。そのため、被食者はそれぞれの捕食者のタイプに応じた複数の防衛戦略を備えている可能性があるが、これを実験的に実証した研究例は限られている。
植食性甲虫であるオジロアシナガゾウムシの成虫は、白と黒の模様をもつことから鳥の糞に擬態していると考えられている。しかし、寄主植物であるクズの葉上で動いていると目立つため、さまざまな捕食者に襲われるリスクがあり、何らかの二次防衛戦略を有すると予想される。そこで本研究では、本種を丸呑み型捕食者であるカエル2種と、噛みつき型捕食者であるトカゲ2種およびカマキリ1種に提示し、実験室条件下でその二次防衛戦略を調べた。
ニホンアマガエルおよびトノサマガエルはすべての個体がゾウムシを攻撃したが、ニホンアマガエルでは9割、トノサマガエルでは1割が捕食に失敗した。ゾウムシは脚でアマガエルの舌や口器にしがみつき、飲み込みを阻害していた。一方、ニホントカゲでは9割、ニホンカナヘビでは全個体が、ゾウムシを攻撃しないか、攻撃しても捕食に失敗した。オオカマキリもすべての個体が捕食に失敗した。ニホントカゲ、ニホンカナヘビ、オオカマキリはゾウムシに噛みついたものの、外骨格の硬さのために摂食を途中で断念していた。
以上の結果から、オジロアシナガゾウムシは、丸呑み型捕食者に対しては舌や口器にしがみつく行動によって、噛みつき型捕食者に対しては硬い外骨格によって防衛しており、捕食者タイプに応じて機能する二次防衛戦略を備えていることが示された。