| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-432 (Poster presentation)
子育てを行う動物では、兄弟姉妹はしばしば限られた資源をめぐって争い、闘争によって個体が死亡する場合も少なくない。致死的なものも含め、きょうだい間闘争については、主に鳥類で長年研究されており、中でも闘争に影響を与える要因として、餌量と子の数の2つが注目されてきた。しかし、多くの鳥類では親が子の数に応じて給餌量を変化させるため、餌量と子の数が交絡要因となり、餌量と子の数のどちらが、きょうだい間闘争に影響を与えているのかを証明するのは難しい。もし、実験的にこれらの要因を操作できれば、それぞれの要因がきょうだい間闘争に与える影響を評価できると考えられる。近年、タンガニイカ湖産カワスズメ科魚類の数種において、鳥類と同様にきょうだい間闘争が発見された。親が給餌しないこれらの種では、比較的成長した稚魚が繁殖縄張り内の餌資源を独占するために闘争すると考えられている。さらに我々は、同湖の協同繁殖魚Neolamprologus savoryi(サボリ)においても、水槽内で自由遊泳開始直後の稚魚同士が激しく噛みつくことを発見した。そこで餌量と稚魚の個体数を操作し、これらの要因が稚魚間の闘争に与える影響を調べた。その結果、稚魚間の闘争は激しく、攻撃時間が長くなるほど稚魚が負う傷が増加し、場合によっては死亡する個体も確認された。また、餌が乏しい場合や稚魚の個体数が多い場合に、攻撃行動の時間が長くなった。以上より、自由遊泳開始直後の稚魚が致死を伴うきょうだい間闘争を起こすこと、また、餌量と子の数が稚魚間の闘争頻度に影響を与えることが魚類で初めて明らかになった。一方で、きょうだい間闘争が個体の生活史にどのような帰結をもたらすのかは未だ不明である。サボリの親が稚魚間の闘争を仲裁するような行動も観察されており、今後は本種の子と親の双方の視点から、きょうだい間闘争とその帰結を検討する必要があるだろう。