| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-434  (Poster presentation)

魚類の顔識別能力の発達における知覚的狭小化の検証: 身近な顔模様に特化するのか?【A】
Studies on perceptual narrowing of individual face recognition in fish.【A】

*河田真輝(大阪公立大学), 日髙諒(大阪公立大学), 川坂健人(新潟大学), 安房田智司(大阪公立大学)
*Masaki KAWATA(Osaka Metropolitan University), Ryo HIDAKA(Osaka Metropolitan University), Kento KAWASAKA(Niigata University), Satoshi AWATA(Osaka Metropolitan University)

 ヒトは乳幼児の初期にさまざまな人種の顔や、複数の言語の音などの幅広い刺激を得手不得手なく識別できる。しかし、成長に伴い、見慣れた顔や母国語の音など、頻繁に経験する刺激に特化し、それ以外の刺激の識別能力が低下する。この現象は知覚的狭小化と呼ばれる。ヒトの場合、生後半年頃までは異人種やサルの既知の顔と未知の顔を識別できる。しかし、その後は自人種の顔識別に特化する(=異人種効果)。このように、ヒトの個体識別能力の発達には、生育早期の経験が重要である。一方、魚類における個体識別能力の発達過程の研究例はなく、ヒトと同様に知覚的狭小化が起こるかも不明である。カワスズメ科魚類Neolamprologus pulcher(プルチャー)は、隣人関係にある既知個体と初対面の未知個体を顔の模様で識別し、既知個体にはあまり攻撃しないことが知られている。また、顔の模様に地域変異があり、異人種効果の報告もある。そこで本研究では、これらの特徴を利用してプルチャーの孵化仔魚を4つの条件で育て、見慣れた種類の顔への知覚的狭小化が起きるか検証した。孵化仔魚に同地域・同種の成魚、別地域・同種の成魚、他種の成魚、空水槽のいずれかを提示して3か月間飼育し、続く3か月間は何も提示せず状態で個別飼育した。同地域・同種、別地域・同種、他種それぞれで成魚の既知・未知の写真を提示し、写真への攻撃時間を測定した。その結果、稚魚期に同地域または別地域の同種を提示された個体は、一部の写真で既知個体をより攻撃した。一方、他種または空水槽を提示された個体は、全ての写真において既知個体にあまり攻撃しなかった。これは、既知への攻撃時間は、生育早期に何を見慣れるかが重要であることを示唆する。一方、どの飼育条件においても、見慣れた種類の顔において既知と未知への攻撃時間に差がなかったため、見慣れた種類の顔に特異的な識別能力の発達は確認されなかった。


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