| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-435 (Poster presentation)
繁殖成功にかかわる要因の研究の多くは、交尾の直前および直後における個体の行動に注目してきた。しかし、近年、非繁殖期における個体の行動が、その後の繁殖期における繁殖成功を含む様々な側面に影響することが明らかになってきている。鳥類の多くは繁殖のためのなわばりをもち、より早くなわばりを確立する個体は繁殖成功が高まることが知られている。一夫多妻制の種では、質の高いなわばりを持つ雄ほど多くの雌を獲得できるため、非繁殖期の間になわばりを確保することは、雄にとって繁殖成功の向上に特に有利となる可能性がある。本研究では、一夫多妻制の鳥類であるミソサザイ(Troglodytes troglodytes)の雄を対象に、非繁殖期になわばりを確保することが繁殖成功に与える影響を検証した。これまでの演者の研究から、ミソサザイの雄には、非繁殖期の間に繁殖のためのなわばりを確保し、繁殖期まで防衛する個体と、繁殖期開始後になわばりを確保する雄がいることが明らかになっている。本研究では、各雄の非繁殖期から繁殖期にかけてのなわばり形成状況と繁殖状況を2年間にわたって調べた。その結果、非繁殖期になわばりを確保した雄は、繁殖期になわばりを確保した雄と比べて、より大きな繁殖なわばりをもっていた。また、前者はより多くの巣をなわばり内に作り、多くの雌とつがいになっていた。一方で、雄の年齢は繁殖成功に影響せず、繁殖成功の向上は年齢に伴う繁殖経験の差のみでは説明できなかった。非繁殖期になわばりを防衛することにはコストが伴うと考えられるが、一夫多妻制の種においては、繁殖成功においてその投資に見合う利益が得られる可能性が示唆された。