| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-436 (Poster presentation)
捕食者は、餌動物が惹きつけられやすい信号を生成することで、信号受信者である餌動物を誘引して捕食することがしばしば報告されている。このような騙しの信号を用いた捕食戦術は攻撃擬態と呼ばれ、チョウチンアンコウやワニガメ、クモなど多くの動物群で知られている。攻撃擬態の代表的な例として、ヘビにおける尾を用いた餌誘引行動が挙げられる。獲物を待ち伏せする際に、虫の動きのように尾を動かして餌を誘引すると考えられているこの行動は、一般にコーダルルアリング(caudal luring;以下CL)と呼ばれ、ボア科、コブラ科、クサリヘビ科のヘビで報告されている。飼育下の実験では、CLの発生が餌の存在と関連することが示唆されている一方で、野外においてCLの発生と餌との関係を実証的に示した研究はほとんどない。本研究の対象種である二ホンマムシ Gloydius blomhoffii は、体サイズの小さな個体の尾が鮮やかな黄色を呈することからCLを行うと考えられてきたが、野外でのCLの観察例は報告されておらず、その実態は未解明である。本研究では、尾全体または尾端のみをくねらせる動きをCLと仮定し、野外においてCLがいつ、どのような条件で発生するのかを明らかにすることを目的とした。2025年8月から9月にかけて、赤外線カメラを用いて昼夜両方で計94時間(昼43時間、夜51時間)の待ち伏せ行動を記録した。CLのバウト基準間隔は300秒とした。その結果、CLバウトは昼夜を通じて31回記録され、発生頻度は夜間よりも昼間に高かった。調査地において、昼行性のトカゲはマムシの主要な餌動物の一つであることから、CLは餌動物の活動時間帯に対応して行われている可能性が示唆された。また、カエルが画角内に出現した直後にCLが行われる様子が観察されたことから、CLは餌動物の出現に応じても行われている可能性がある。