| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-437 (Poster presentation)
自然界の多様な分類群で、季節変動する性的二型が見られ、婚姻色はその代表例である。婚姻色が伝達する情報について、魚類や鳥類を対象に多くの研究が実施されてきた。一方で、婚姻色に加えて、同期して発達する他の繁殖行動に関連する形態形質およびそれらに基づくパフォーマンスまでを統合的に定量評価した研究は限られる。体色がどの程度個体のパフォーマンスを反映しているかを明らかにするには、個体内での体色・形態・パフォーマンスの変化の関連を調べる必要がある。トカゲ属では繁殖期のオス特異的に鮮やかな赤色が発現する。この赤色は血中テストステロン濃度の高まりに応じて発現され、赤色の強さと白血球数が負の相関を示すことから、個体の健康状態を正直に伝える機能があるという仮説が提唱されてきた。しかし、メスはより赤いオスを好むわけではないことが示唆されており、赤色が伝達する情報は未解明のままである。演者らは、繁殖期のオスは咬みつきを伴う激しい闘争を行うこと、および頭幅が赤色と同じく繁殖期に最大化することから、赤色はオス間で闘争能力を伝える正直な信号として機能するという仮説を立て、ニホントカゲを対象にこれを検証した。繁殖期にオスを採集し、闘争能力の指標としての咬合力、体サイズの指標としての頭胴長、体色を測定した。咬合力に対する赤色の程度と頭胴長の効果を評価した結果、赤色は頭胴長とともに、咬合力と有意な相関を示した。さらに、採集した個体の一部を対象に赤色の程度と咬合力を二週間おきに合計三回測定し、形質間の同期性を評価した。その結果、赤色の程度と咬合力の変動はあまり一致していなかった。以上より、赤色は、オス間で闘争能力を表す指標として機能し得る一方で、個体内においては咬合力と変動メカニズムの関連が内分泌機構を介した間接的なものであるために同期が弱く、パフォーマンスの変化をリアルタイムに反映していないことが示唆された。