| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-438  (Poster presentation)

ニホンカナヘビにおける個体識別能力と順位制の評価【A】
Assessing individual recognition and dominance hierarchy in the Japanese grass lizard【A】

*久保軍馬, 城野哲平(京都大学)
*Gumma KUBO, Teppei JONO(Kyoto Univ.)

順位制とは、攻撃性や資源利用の優先権が個体間で非対称であり、その非対称性が安定して継続することで確立される階層的な社会構造を指す。近年では、順位制がどう維持されるかという点に注目が集まり、個体識別が重要な役割を果たすことが示されている。しかし、順位制の検証は主に哺乳類・鳥類・魚類・昆虫類を対象に進められており、爬虫類など他の分類群に関する知見は依然限られている。そのため、個体識別が動物一般における順位制の普遍的な維持機構として機能するかについての理解は十分に得られていない。本研究は、カナヘビ科の爬虫類であるニホンカナヘビをモデルとして、順位制の有無を明らかにするとともに、その発達過程および維持機構について検証することを目的とした。2025年に、同一個体を繰り返し対面させる実験群と、試行毎に異なる相手個体を対面させる対照群の2群間で反応の変化を比較する対面実験を行った。また、半野外アリーナに6個体を1か月間放逐する長期飼育実験を行った。前者では、実験群では試行を重ねるごとに、相手の体表に対して舌を触れさせ化学刺激を検出する行動の頻度が減少した一方で、対照群では変化しなかった。この結果から、本種は化学刺激に基づく個体識別能力を有することが示唆された。後者では、闘争に基づいて順位関係が形成され、闘争時に相手個体の体表に吻端を近づける行動が見られた。また、闘争の結果は直前の勝敗結果の影響を受けた。さらに、闘争の頻度は時間経過とともに減少し、順位関係は安定していった。このことから、本種は闘争によって順位を確立し、個体識別と学習に基づき不要な闘争をさけることで、順位関係を安定的に維持させていると推察された。以上より、順位制の維持機構に関する知見が限られている爬虫類においても、個体識別が重要な役割を果たす可能性があることが示された。


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