| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-439  (Poster presentation)

飼育下オットセイにおける睡眠準備行動について【A】
Sleep-preparatory behavior in captive fur seals【A】

*島遼(京都大学), 藤本陽介(京都水族館), 三谷曜子(京都大学)
*Haruka SHIMA(Kyoto Univ.), Yosuke FUJIMOTO(Kyoto Aquarium), Yoko MITANI(Kyoto Univ.)

睡眠は動物の生存に不可欠な生理現象である。いくつかの陸上動物では入眠前に寝床づくりやグルーミングなどの構造化された行動がみられ,これらは睡眠準備行動と呼ばれる。マウスにおける脳波測定や行動の阻止実験から,睡眠準備行動は覚醒から睡眠への移行や睡眠状態の維持に関与すると考えられている。しかし,半球睡眠や遊泳睡眠など特殊な睡眠様式をもつ海棲哺乳類においてはこの行動の存在についてほとんど検討されていない。本研究では,陸上と水面の両方で休息し,水面では半球睡眠を行うオットセイを対象に, 睡眠準備行動の存在可能性を検討した。京都水族館で飼育されているミナミアメリカオットセイ5個体を8日間(11:00~17:00)観察し,撮影動画から陸上休息および水面休息開始前15分間の行動を連続記録した。その結果,個体差はあるものの,陸上・水面のいずれにおいても入眠前にグルーミングが高頻度で観察された。グルーミングの対象部位は水面での浮力維持に関与する体幹部に加え,顔や,被毛のないヒレ同士を擦り合わせる行動も認められた。また,睡眠終了後,数分以内に別の場所で再入眠する場合は再入眠前のグルーミング頻度が低下する傾向がみられた。ヒレ同士の擦り合わせは放熱部位の接触を伴うことから,入眠に向けた体温調節に関与する可能性が考えられる。ただし,観察個体は入眠前に陸上と水中の移動を伴うことが多く,入水・出水後に行われる通常のグルーミングとの区別は困難であった。一方,水面では睡眠姿勢をとった状態でのグルーミングも観察され,姿勢の安定を図っている可能性が示唆された。これらの行動をオットセイにおける普遍的な睡眠準備行動と定義するためには,脳波計測を含むさらなる検証が必要であるものの,本研究は,海棲哺乳類における睡眠準備行動の存在可能性についての予備的知見となった。


日本生態学会