| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-446  (Poster presentation)

雌雄のペアでウミシダ類に住み込み型共生を行うコマチテッポウエビの繁殖戦略の解明【A】
Elucidating the reproductive strategy of the ectosymbiotic snapping shrimp Synalpheus stimpsoni dwelling in male–female pairs on comatulid crinoids【A】

*髙橋昌悟(大阪公立大学), 幸塚久典(東京大学臨海実験所), 幸田正典(大阪公立大学), 安房田智司(大阪公立大学)
*Shogo TAKAHASHI(Osaka Metropolitan Univ.), Hisanori KOHTSUKA(MMBS), Masanori KOHDA(Osaka Metropolitan Univ.), Satoshi AWATA(Osaka Metropolitan Univ.)

 温帯から熱帯の海洋では様々な共生関係が見られ、共生者が宿主に「住み込み共生」する例も多く知られる。共生者の多くは小型であり、宿主から離れて生活することができないため、性転換や宿主の操作など、宿主から離れずに繁殖を可能にする特有の繁殖戦略を進化させてきたと考えられる。宿主生物の中でもウミシダ類は特に多様な生物の宿主となることが知られているが、ウミシダ類に住み込む共生者の繁殖戦略の知見はない。そこで本研究では、ウミシダ類にペアで住み込み共生を行うハクセンコマチテッポウエビ(以後、テッポウエビ)の繁殖戦略を解明することを目的とした。
 2024年と2025年に愛媛県愛南町で、500個体のウミシダ類を潜水調査した結果、212個体のテッポウエビがコアシウミシダ類2種に特異的に共生することがわかった。テッポウエビは雌雄のペアで共生し、雌は雄よりも大きかった。これは雄から雌への性転換を行う動物に共通する特徴である。また、テッポウエビ類の一部は性転換を行うことから、本種も性転換する可能性が考えられた。そこで、野外でウミシダ123個体とテッポウエビ184個体の個体識別を行い、夏季から秋季の2ヶ月間追跡調査を行った。しかし、性転換は起こらず、ウミシダ類は移動しなかったことから、宿主の操作の可能性も低いと推測された。本種の繁殖戦略の謎を解く手がかりとして、秋季のウミシダ上には雌雄ペアに加え、未成熟個体が複数観察された。また水槽実験から、未成熟個体同士は闘争するが、成熟個体と未成熟個体の間では闘争は発生しなかった。
 以上より、本種では、性別が未決定な未成熟個体が、繁殖ペアのいるウミシダ上に成長抑制をしながら留まり、ペアの片方が消失した時に、雄または雌へ分化して繁殖する可能性が考えられた。このような性決定様式は、住み込み型共生者では初めての観察例であり、共生生物の繁殖戦略について新たな知見を提供する。


日本生態学会