| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-454  (Poster presentation)

カエル水晶体の安定同位体比による履歴復元手法の検討~収縮の影響と代謝速度の検証~【A】
Exploring the use of stable isotopes in eye lens to reconstruct frog life histories: testing the effects of lens shrinkage and metabolic rate【A】

*志賀有紗(東京農工大学), 松林順(福井県立大学), 岩井紀子(東京農工大学)
*Arisa SHIGA(TUAT), Jun MATSUBAYASHI(FPU), Noriko IWAI(TUAT)

カエルは変態に伴い食性や生息環境が大きく変化するため、各生活史で形成される組織の安定同位体比も変化すると考えられる。変態前後で同位体比の異なる食物を与えた既存研究では、幼生から成体まで二次代謝を受けずに存在する水晶体から、この変化の復元が可能であった。一方で、復元された変態前後の同位体比の切り替わりは緩やかで、そこから予測された変態サイズと実際の変態サイズのずれが課題であった。本研究は、カエル水晶体の安定同位体比を用いた変態サイズ推定手法の確立を目的とし、食物の同位体比が水晶体に反映されるまでのタイムラグと、成長に伴う水晶体の収縮の影響を検証して、野外個体に適用した。タイムラグの検証では、ウシガエルを対象とした飼育実験により、同位体比の異なる餌に切り替えてから何日後に水晶体の最新形成部の値が切り替わるか、日単位で確認した。切り替え直後からδ13C、δ15Nともに単調に増加し、水晶体の成長には摂取直後の食物の値が反映されることが示された。そのため、タイムラグの考慮は不要と考えられた。収縮の検証では、餌の切り替え後2、4、6か月間飼育した後水晶体を取り出す飼育実験を行った。採取した水晶体は外側から順に剥離し、同位体比の切り替わり点と、餌切り替え時の実際の体サイズから推定される切り替わり点とのずれから収縮率を得た。その結果、全個体のδ13Cとδ15Nで、同位体比の切り替わり点は実際の餌切り替え点より内側に位置し、収縮率は飼育期間によらず11―37%であった。これにより、収縮の影響は考慮すべきであることが示された。本手法を野外個体に適用して変態サイズを推定した結果、採取地点で得られた変態サイズより大きかったが、採取場所による大小関係はおおむね反映できた。本手法の確立は、カエルの適応度における水陸それぞれの成長量の寄与を評価可能とするため、効果的な保全等への活用が期待される。


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