| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-455 (Poster presentation)
真社会性は共同育児、分業、世代の重なりを特徴とする高度な社会形態であり、その成立には環境温度依存的な生活史の調節が必要となる。変温動物であるハチ目では、気温が採餌、幼虫発育、活動時期を制限し、親子世代の重複を左右すると考えられている。
ツヤハナバチ属 (Ceratina) は同集団内に単独性の巣と社会性の巣が混在する。本研究では、環境温度変化によっていかに生活史が変化し、社会性の巣を促す可能性があるかを検証することを目的とし、ヤマトツヤハナバチ (Ceratina japonica) を対象に東京での年次調査を行い、その気温依存的な生活史の変化を北日本 (盛岡・札幌・稚内) の既存データと比較した。さらに有効積載温度から幼体発育期間を推定し、採餌活動に必要な最低気温に基づく採餌期間と個体サイズの関連を解析した。
結果、盛岡の個体群は1化性、東京の個体群では2化性であり、盛岡の個体群よりも春の活動開始が早く、産卵期間は短かった。また東京では産卵サイクルの時間が盛岡の約半分であったが、産卵数には変化が無かった。年間の幼体発育可能期間は盛岡で1世代分に限られる一方、東京では複数世代分が存在していた。なお東京、盛岡、札幌、稚内間で年間採餌可能日数と個体サイズに有意な相関は認められなかった。そして東京と盛岡間で社会性の巣の割合には変化が見られなかった。
以上より、東京の個体群では各サイクルの規模 (産卵数や個体サイズ) を増加するのではなく、各産卵サイクルや幼虫の発育が速まり、繁殖回数を増やす場合があると明らかになった。これは近縁種で見られている規模の変化とは対照的である。よって、近縁種間で、社会性に影響する可能性のある生活史の特徴が、同様の環境へ異なった適応をしていることを示す。今後は種間で生活史による環境への適応の違いが、社会性進化にどのように影響するのか、生活史の変化が社会性の巣の割合が変動することに直結しない要因について検証する必要がある。