| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-458  (Poster presentation)

シカの行動の違いが土壌微生物群集の分解機能に与える影響の相対的重要性の評価【A】
Evaluating the relative contributions of different deer behavioral effects to soil microbial decomposition【A】

*髙木惇司, 中村誠宏(北海道大学)
*Atsushi TAKAKI, Masahiro NAKAMURA(Hokkaido Univ.)

近年、人間活動に伴う餌資源の増加や狩猟圧の低下によりシカ個体数の急増がしており、生態系や炭素循環への影響が懸念されている。しかし、シカが土壌微生物群集の分解機能を介して炭素排出に与える影響については、十分に検討されてこなかった。特に、シカは行動に応じて土壌微生物分解に異なる影響を及ぼす可能性が考えられるため、採食、踏圧、フン供給といった行動を分けた実験で影響を評価する必要がある。本研究では、シカの採食・踏圧・フン供給が土壌微生物分解に与える影響の相対的重要性を明らかにすることを目的とした。
実験は北海道大学苫小牧研究林の広葉樹二次林において、2024年11月から2025年8月に実施した。採食処理はシカの嗜好性の異なる植物リターを秋と夏の2回添加した。踏圧処理はシカの足を模した棒による圧密処理を毎月実施した。フン供給処理はシカ高密度地域の単位面積当たりのフンの投入を毎月実施した。土壌微生物群集の分解機能はBIOLOG EcoPlateを用いて、炭素基質分解多機能性および分解される炭素基質の組成(機能組成)を算出した。
その結果、採食処理は土壌微生物群集の分解多機能性を低下させ、特にカルボン酸、炭水化物、アミノ酸、アミンなどの易分解性基質群で顕著な影響が認められたが、機能組成には影響しなかった。踏圧処理はいずれの指標にも有意な影響を与えなかった。フン供給処理では、アミノ酸およびアミンの分解多機能性が上昇し、機能組成の類似性が高まる傾向が示された。
以上の結果から、シカの選択的な採食によるリターとなる植物組成変化は機能組成の変化を介さずに易分解性基質の分解機能を低下させ、シカのフン供給は窒素を含んだ有機物の分解に適した機能組成に変化した可能性が考えられる。シカは土壌微生物分解を変化させ、森林の炭素排出過程に影響を及ぼす可能性が示された。その炭素排出への影響の方向性や機能的特性は、シカの行動によって異なることが示唆された。


日本生態学会