| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-459 (Poster presentation)
地球温暖化の進行に伴い、局所的に冷涼で安定した微気候を維持するmicrorefugiaは、移動能力の低い生物にとって個体群存続を支える重要な場とされる。風穴は岩隙から冷気を放出し、夏季でも周辺より低温な微気候を形成することが報告されている。しかし、これまでの研究は特定種や植生に基づく定性的評価が中心であり、動物群集スケールでの定量的検証は十分ではない。そこで本研究では、種の分布と気温から算出される種温度指数(STI)および各種の個体数に基づく加重平均である群集温度指数(CTI)を用いて、風穴群集は①低CTIを維持し、②種構成の年次変動が小さいという仮説を検証した。
北海道遠軽町の風穴および周辺林分において、2021年8月および2025年8月にピットフォールトラップ調査・地温調査を実施した。得られた地表徘徊性甲虫群集データをNMDSにより群集構造を可視化し、PERMANOVAにより年次差及び林分タイプ間差を検定した。出現種のSTIは、モニタリングサイト1000、ひがし大雪自然館、北海道大学総合博物館の採集データとAMeDAS気象データを用いて算出し、その加重平均を調査地点のCTIとした。
解析の結果、風穴は周辺林分に比べて地温が有意に低く、種数も少なかった。一方、Simpsonの多様度指数は有意差を示さなかった。これらの傾向は両年で共通していた。風穴群集のCTIは両年で低い値を示し、寒冷適応的な温度特性が維持されていた。種構成においても、風穴群集は周辺林分群集と有意に異なり、周辺林分群集に比べて年次変動が小さい傾向が見られた。さらに、高STI種は周辺林分に、低STI種は風穴に偏って出現しており、この傾向も両年で一貫していた。以上より、風穴の低温環境は群集構造と温度特性の両面に影響し、安定したmicrorefugiaとして機能している可能性が示唆された。