| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-460 (Poster presentation)
潟湖は沿岸に形成される半閉鎖的環境であり、物理環境や生物生産などの特性は潟湖間で大きく異なる。また、沿岸に形成されるアマモ場は海洋生物に生息基質を提供することで生物群集の構成や多様性に影響を与えることが知られている。広大なアマモ場と複数の河川の流入による著しい塩分勾配を持つ風蓮湖は、これらの生物学的・非生物学的要因の影響を受け独自の生物群集構造を持つと考えられる。しかし、湖内全域におけるベントス群集の空間変異とその規定要因は十分明らかになっていない。本研究では風蓮湖におけるベントス群集の空間変異、環境要因に対する応答、およびその季節変化を評価した。2024年7月及び10月に湖内の22地点でそりネットを海底上で70m曳網しベントスを採集し、種同定および個体数計測を行った。また各地点について塩分、水深、アマモの有無を計測し、これらを説明変数としてベントス群集の類似度、種多様性、優占種の個体数との関係性を解析した。その結果、ベントス群集には7月から10月にかけて優占種の変化がみられ、個体数が多い地点が河口域から湖口へと移行した。優占種の個体数はそれぞれ異なる塩分への応答を示し、種ごとの塩分選好性の違いと繁殖イベントなどの生活史に基づく個体数変動により個体数の空間分布パターンの季節変化が生じたと考えられた。また、群集類似度には7月には塩分のみが、10月には塩分とアマモの有無が関係していたが、種多様性に対してはこれらの効果は検出されなかった。以上より、塩分は季節に関わりなく種構成に影響を与える一方、アマモの有無の重要性は季節によって変化することが示された。種多様性は一般に塩分濃度とともに減少することが知られており、塩分勾配を有する近隣の厚岸湖でも同様の傾向が報告されている。しかし、風蓮湖でこの傾向は認められず本湖の群集構造が特異的である可能性が示唆された。