| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-462 (Poster presentation)
河川における主要な生産者である付着藻類の量や組成は光・撹乱・栄養塩・摂食圧等の要因により制御される。特に藻類食者であるアユは採餌による藻類量の減少,排泄等による栄養塩回帰がもたらす施肥効果により藻類量を増加させる可能性があるが、アユが優占する環境下で両過程のどちらが卓越するかは十分に検証されていない。
本研究では,堰堤によりアユの移動が制限されている信濃川水系の依田川にて,藻類に対するアユの摂食圧と栄養塩回帰の寄与を評価した。堰堤・河川の合流点を境としてアユの生息密度が異なる4サイトを設定し,食み跡の有無を区別した藻類量及び栄養塩濃度(NH4+,SRP)を調査した。
藻類について,予想に反して食み跡のある石において藻類量が多かった。この結果は,アユが藻類量の多い石を選択的に利用している可能性を示唆する一方,摂食圧効果は検出されなかった。
栄養塩濃度について,NH4+濃度(0.5〜0.76µM)は下流にかけて僅かに増加し,SRP濃度(0.82〜0.93µM)はサイト間で殆ど差はなかった。
また,現地での飼育実験にてアユの排泄速度(NH4+:114.5±38.6µmol/hour・ind,SRP:10.5±4.3µmol/hour・ind)を推定した。その排泄速度に放流量に生残率を考慮した各サイトの個体数(合計13,019〜26,637匹)を乗じ,流量で除することで河川全体への栄養塩回帰量を算出した。推定されたアユ由来の栄養塩回帰量はNH4+:0.04〜0.07µM,SRP:0.004〜0.008µMと非常に小さく,観測されたNH4+濃度の上昇をアユだけでは説明できず,アユによる栄養塩回帰は限定的であることが示唆された。
摂食圧はアユの生息密度,栄養塩回帰には平均水深×平均流速(希釈力)に対するアユの生息密度が関係していると考えられ,他文献値と比較すると依田川の低いアユの生息密度,大きな希釈力が摂食圧及び栄養塩回帰が見られなかった要因と示唆された。そのため類似する条件の河川ではアユによる効果は見られないか局所的である可能性が示唆された。