| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-463 (Poster presentation)
群集構造の時間変動パターンを予測することは、生態学における中心的な課題である。これまで、群集を構成する種の生態的特性のわずかな差異が、同じ環境下での群集の時間変動パターンを大きく異ならせることが理論的に示されている。それら研究のなかで、成長に伴って食性が変化する「生活史雑食者」は、相互作用ネットワークを複雑化することで群集の時間変動パターンを多様にすると示唆されている。これは、生活史雑食者がいると群集の動態が予測しにくくなることを意味する。しかし、生活史雑食者は生態系に広く分布する生物であるにも関わらず、この理論を裏付ける実証研究はない。
湖沼で卓越的に出現する動物プランクトンであるケンミジンコ類は、成長に伴って藻類食から雑食へと食性が変化する典型的な生活史雑食者である。すなわち、ケンミジンコ類はミジンコ類などの植食性種の競争者であるとともに捕食者でもある。このギルド内捕食により、ケンミジンコ類は群集動態を複雑化させると示唆されている。しかし、ケンミジンコ類により群集の時間変動パターンが多様化するのか、すなわち群集動態の予測性が実際に低下するのか不明である。
そこで本研究では、ケンミジンコ類(Cyclops vicinus)と2種のミジンコ類(Daphnia cf. pulex, Ceriodaphnia cf. smirnovi)を用いて種組成が異なるモック群集を作成し、12週間にわたって群集動態を追跡した。その結果、ケンミジンコ類を含む多種系では、群集中から少なくとも1種が排除された。さらに、ケンミジンコ類を含む多種系では、単種系やミジンコ類のみの多種系と比べて、繰り返し間での群集動態のばらつきが有意に大きくなっていた。これらの結果は、ケンミジンコ類が群集にいると、群集全体の動態が予測しにくくなることを示唆している。