| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-464  (Poster presentation)

水系ネットワークは用水路の魚類群集を説明するか?【A】
Do River Network Structures Explain Fish Assemblages in Irrigation Canals?【A】

*兼子創(東北大学), 藤本泰文(伊豆沼財団), Leanne K FAULKS(Tohoku Univ.), 牧野渡(東北大学), 加藤駿(東北大学), 宇野裕美(東北大学)
*So KANEKO(Tohoku Univ.), Yasuhumi HUJIMOTO(Izunuma-UchinumaEnv.Foundation), Leanne K FAULKS(Tohoku Univ.), Wataru MAKINO(Tohoku Univ.), Shun KATO(Tohoku Univ.), Hiromi UNO(Tohoku Univ.)

 河川生態系では、工作物の設置や流路変更などの大規模な生息地改変により、魚類群集の単純化・均質化が進行してきた。これに対する保全の議論は、主に河川湖沼を対象として展開されてきた。一方、水田・用水路は地域によって残存氾濫原として機能し、魚類の産卵や成育、捕食回避場として重要と考えられるが、実態は十分に解明されていない。また、魚類でも主に河川湖沼を生息域とするが、産卵や稚魚の成育場として一時的に氾濫原を利用する種も多く、両環境は不可分な関係にある。そこで本研究は、低地水域全体における生態系の関連性の把握・評価を目的とし、河川や湖沼に限らず水田や用水路を含むあらゆる水域を包括的に対象とした。以上水域で生物の分布および生活史を通じた利用実態を調査し、その結果に基づき各水域が果たす役割を位置づけた。
 調査は宮城県北部に位置する伊豆沼内沼周辺の4河川、10水路で2025年9月上旬に実施した。各地点に20m区間を2個設け、電気ショッカーと各種網類を用いて魚類を採集した。あわせて、水質・物理・空間に関する環境変数を測定し、多変量解析により水域間の群集構造の差異とその規定要因を検討した。
 結果、計19種2610個体の魚類を採捕した。階層的クラスタリングからは河川と用水路で魚類群集構造は明瞭に分化し、また非計量多次元尺度法(nMDS)からは沼との標高差が主要因として検出された。用水路の種組成は沼の部分集合であったが、河川には沼・用水路にみられない特異的な種が多かった。これは、用水路では標高差が小さく泥や有機物が堆積する湛水的環境に適応した種が優占し、河川では標高差により形成される流水・砂底環境が、夏季の沼内低酸素を忌避する種に適していたためと考えられる。河川は沼とともに低地水域全体の魚類多様性に相補的に寄与する一方、用水路はモツゴなど小型魚の当歳魚の割合が高く、産卵・成育や退避場として重要な生息場であることが示唆された。


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