| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-465 (Poster presentation)
近年の農村生態系やその生物多様性は劣化傾向にある。なかでも水生昆虫類は多くの種がレッドリストに掲載されており、その保全は急務である。水生昆虫が主に利用する水田やため池における群集成立過程を解明することは、水生昆虫の保全に貢献するような水田生態系管理において必要な知見である。水生昆虫のなかでも、一生を水に依存する真水生昆虫の成虫は、中干等によって田面水が干上がった際にため池などの恒常的な水域へ避難することが知られる。通常、真水生昆虫はより好ましい局所環境に生息すると考えられるが、中干期間にため池へ避難する際にも局所の環境特性を考慮するかについては定かではない。本研究では、ため池の局所環境要因が水生昆虫群集に与える影響を農事歴ごとに評価し、その影響の変動から中干期間における水生昆虫の環境選好性の有無を検証した。そのために、津軽半島東部における水田景観内の複数箇所のため池に調査区を設定し、年間を通した環境調査と群集調査を行った。調査日は湛水期、中干開始、中干期後半、断続灌漑期の4回とした。調査の結果、断続灌漑期の調査でのため池内の甲虫目成虫の平均個体数とその増加量が最も大きかった。また、ため池間の真水生昆虫群集組成の類似性は、中干期後半までに比べて、断続灌漑期に増加した。さらに、真水生昆虫の群集組成と相関するため池の局所環境を調べたところ、中干開始までは水生植物と底泥に関する要因が群集組成と有意に相関したのに対し、中干期後半以降では、群集組成と有意に相関する局所要因は見出されなかった。これらの結果は、真水生昆虫が中干期間にため池へ避難する際、環境特性よりも水場への避難そのものを優先するため、環境選好性を持たないことを示唆している。避難先としてのため池は、局所環境の違いよりも移入の容易さが重要となる可能性がある。