| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-468  (Poster presentation)

受動的音響モニタリングによるセミ類の初鳴日検出と最適な録音スケジュールの検討【A】
Passive Acoustic Monitoring on Onset of Cicadas Calling and Exploring Its Optimal Recording Interval【A】

*丸山智輝(富山大学大学院), 和田直也(富山大学 GRASS)
*Tomoki MARUYAMA(Grad Univ. Toyama), Naoya WADA(GRASS Univ. Toyama)

 気象庁は、1953年から68年間にわたって生物季節観測を行ってきたが、近年の都市化や生息環境の変化によって対象となる生物の観測が困難になったことを理由に、動物の観測項目は2021年以降全て廃止された。これまでに気象庁によって蓄積された観測結果は、気候変動が及ぼす動物への影響を評価する上で重要であり(Ellwood et al.,2012)、気象台周辺における生息環境が未だ良好な状態で残されている地方都市においては、民間による生物季節観測を持続可能な代替手法も活用して実施することが求められている。
 近年の急速な録音技術の発展を経て、野外における生物音を録音装置を用いて自動的に捉える受動的音響モニタリング (PAM)が盛んに行われている。PAMでは高い時間解像度での長期観測が可能であり、初鳴日検出を目的とする生物季節観測の代替手法として有効だと考えられる一方、膨大な音響データの取得に伴う解析負荷や観測コストの増大が課題となる。
 本研究では、富山地方気象台が観測項目としていたセミ類5種を対象に、観測精度と録音時間の双方のバランスが最適となる録音スケジュールの探求を目的に、富山市内の環境が異なる8地点においてPAMによる初鳴日検出を行った。録音強度および録音時間帯を組み合わせた複数の録音条件を音響データに適用し、得られた初鳴日を比較することで録音条件が初鳴日検出の精度に及ぼす影響を評価した。
 その結果、初鳴日検出の精度に及ぼす録音条件の影響は種によって大きく異なった。ニイニイゼミおよびヒグラシでは、いずれの録音条件下においても初鳴日の遅延は小さかった。一方、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミでは、特定の録音条件下において初鳴日の遅延が顕著に増加した。録音強度の影響は録音時間帯と比較して相対的に小さかった。以上より、録音時間帯の適切な設定が初鳴日推定の精度向上において特に重要であり、観測コストを低減しても一定の精度を維持できることが分かった。


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