| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-469  (Poster presentation)

木に穿孔し、共生菌を利用する蜂と甲虫の材内共存:穴の分布とサイズにみる競合の影響【A】
Coexistence of wood-boring wasps and beetles utilizing symbiotic fungi: effects of competition as indicated by distribution and size of their holes【A】

*髙木隆, 梶村恒(名古屋大・院・生命農)
*Ryu TAKAGI, Hisashi KAJIMURA(Nagoya Univ. Bioagriculture)

樹木穿孔性昆虫のうち、キバチ類や養菌性キクイムシ類(以下、キクイムシ)は、未分解の樹木に共生菌を導入することで材内での繁殖を可能にしている。クビナガキバチ科(以下、キバチ)の場合、伐倒・枯死して間もない広葉樹を利用する。こうした樹木は森林内で時空間的に限られた資源であるため、キバチは他のキバチ種やキクイムシとの共存戦略を持つと考えられる。実際に、同所的に生息するキバチ種間では利用樹種が異なり、資源分割が示唆されている(Takagi and Kajimura 2025)。その一方で、キバチとキクイムシは同一樹木から発生するが、その共存機構は不明である。
そこで本研究では、各昆虫種の羽化脱出時期を把握し、伐倒木上の穿孔痕跡(キバチ脱出孔、キクイムシ穿入孔)から両者の分布様式を解析した。また、体サイズと相関する脱出孔の直径から、キクイムシとの競合がキバチに及ぼす影響を検討した。さらに割材して、両者の坑道形成状況を確認した。
その結果、同一樹木からキバチ1種とキクイムシ2種が発生し、キクイムシが早期であったことから利用時も先行すると推測された。キバチは細い材で多く発生したが、キクイムシは材サイズとの明確な関係を示さず、このスケールでの資源分割は認められなかった。樹木表面を微小パッチに分割すると、キバチは集中的、キクイムシはランダムな分布を示した。空間構造を考慮したベイズ推定(INLA)により、キバチはキクイムシの少ないパッチに集中することが証明され、両者のパッチスケールでの資源分割が示唆された。また、キバチ密度の増加に伴って脱出孔直径は減少し、小型化が推察された。さらに、両者の坑道間に菌類の衝突痕跡(帯線)が観察されたことから、キバチはキクイムシ共生菌の定着部を回避して穿孔したと考えられた。本研究は、樹木穿孔性昆虫群集における微小スケールでの空間構造を明らかにし、その形成に共生菌が関与する可能性を示唆するものである。


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