| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-472  (Poster presentation)

根っこの昆虫群集:トドマツ枯死根の腐朽に伴う材依存性昆虫群集の遷移【A】
Insects in decaying roots: Succession of saproxylic insect community in Sakhalin fir stumps【A】

*森脇佑太(名古屋大・院・生命農), 井口和信(富良野市), 土岐和多瑠(名古屋大・院・生命農)
*Yuta MORIWAKI(Nagoya University), Kazunobu IGUCHI(Furano City), Wataru TOKI(Nagoya University)

 材依存性昆虫は系統学的、生態学的に多様であり、材食性や菌食性など食性タイプも多様である。先行研究では、枯死木の腐朽の進行に伴って各食性タイプの出現頻度は変化し、多様化する傾向がある。枯死木の状態によって成立する材依存性昆虫群集の構造は異なるが、いずれも地上部(倒木、切り株)についての知見に留まり、地下部(根)については未解明である。
 本研究は、枯死木の地下部における腐朽の進行と材依存性昆虫群集の遷移の関係を明らかにすることを目的とした。北海道富良野市の東京大学北海道演習林において、伐採から1-37年が経過したトドマツの枯死根を対象に、(1)伐採からの経過年数(枯死経過年数)と腐朽の進行の関係、(2)枯死経過年数と材依存性昆虫群集の関係について調べた。
 (1)に関して、枯死経過年数の増加に伴い、腐朽の進行した根とそうでない根が見られ、年数のより経過した根では心材腐朽が認められた。このことは、枯死経過年数の増加に伴って枯死根間の腐朽状態の異質性が増大することを示唆する。
 (2)に関して、枯死経過1年を除く、全ての枯死経過年数において材依存性昆虫が採取された。枯死経過9年から材食性、菌食性、腐食性や肉食性など多様な食性タイプの材依存性昆虫が出現した。枯死経過年数に伴う食性タイプの多様化傾向は見られなかった。主な材食性昆虫はゾウムシ科(小型種)、カミキリムシ科(大型種)、クワガタムシ科(大型種)であった。カミキリムシ科とクワガタムシ科のほとんどは枯死経過9年に出現した一方、ゾウムシ科は枯死経過16年以降の全ての経過年数で出現した。これらの材食性昆虫による利用時期の違いは、クワガタムシ科などの大型の材食性昆虫が残した資源をゾウムシ科が利用することを示している可能性がある。


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